「逆光」
あなたは、誰よりも輝いて、皆の憧れの存在だというのに。
どうして、私に向けているその表情は翳っているの?
ああ、私が、あなたのその苦しみを和らげてあげられるような、そんな光を放てる存在なら良かったのに。
『そんなことはない』
『あなたは気が付いていないだけ』
『ああ、あなたはこんなにも眩しいのに』
『私を、私のことだけ見つめて欲しい。』
『そうすれば、私も、あなただけを照らし続けてあげられるから』
『私を、あなただけのモノにして。お願いだから』
【こんな夢を見た】
「夢見の巫女さまが、目覚められた」
その広間の中で、高位の者と思われる初老の男が座に着くなり告げた。日頃の政務の疲れもあってか、いささか顔色が悪い。
「して、いかような夢を?やはり、出陣か!」
武官と思しき壮年の男が、勢い良く尋ねた。
「いや、それが……」
政官が、口をつぐんだ。
「黙ってしまっては、わからんではないか!」
武官が一喝した。下座に控える若武者達も騒ぎ始め、政官達は、それを苦苦しく見つめていた。
「儂も信じられんのだが……消えるそうじゃ」
「なに?」
「だから、この世から天道様が消えてしまうそうじゃ!戦などしている時ではない、その時に備え、隣国と手を携えて苦難の道を乗り越えよ、と……」
「は……何を莫迦な……貴様が戦に臆して、巫女さまを抱き込んだのであろう、話にならん!」
武官が座を蹴って、勢いよく立ち上がり歩き出すと、武者達もそれに続いた。
「何とするのだ!」
政官の悲鳴のような問いに、武官は冷笑で返した。
「決まっている、戦支度よ。なに、我らが仕掛けずとも、向こうから攻め寄せてくるのは目に見えておる。国を守るのに、何の遠慮があろうか」
遠のく武官の背中を見つめながら、『守りたいのは貴様の立場であろうが……』と思う政官ではあったが、引き留めることは出来なかった。なぜなら、彼もまた、空に輝く天道が消えるなどとは、到底信じられなかったからだ。
実際のところ、その翌日以降も天道は輝き続け、その光の下で、人々はお互いの血を流し続けた。
夢見の巫女、と呼ばれた者は、いつの間にか姿を消してしまっていた。世を儚んで身投げしたとも、親しい者だけを連れて、天に昇ったとも言われている。
それから、幾星霜……天道……太陽と呼ばれるようになっていた天体は、最後の時を迎えようとしていた。が、人々の争いは止まず、あの時、手を携えることが出来なかった人類は解決策を見いだせぬまま、滅びの道をひた走っていたのだった。
「シェア」
ああ、すっごく良かったな……
客電が点灯されたライブハウスで私は立ち尽くしている。私の最推しバンドのラストライブが、今終わったのだ。
先ほどまでの熱狂は雲散霧消し、ステージには機材とセンターにポツンとマイクスタンドが立っている。
でも、私には、そこにまだあなたが居るみたいに思えて。
「トモヤ!トモヤ!トモヤ!トモヤー!」
無人のそこに向かって、全力のメンバーコール。今日で最後なんだ、感情の出し惜しみなんて、無しだ。
「トモヤーーー!」
すぐ隣から、私と同じくらいの大声が。隣を見ると、泣きはらしてメイクなんかグチャグチャな女の子がいた。
きっと私もおんなじ顔してる。
ふと、目があった。何かが、通じた
「「トモヤ!トモヤ!トモヤ!トモヤー!」」
気が付いたら、良く分かんないけど、二人で手を繋いで、思いの丈を大声で叫んでた。
息を切らした瞬間、退場を促すアナウンスが流れる。
「出ようか」
彼女が声をかけてきて、
「うん」
私が応えて。
ハコから出て、外に貼ってあったライブのポスター見上げて、そしたら何かがこみ上げてきて、彼女と抱き合って、泣いた。
あの日、私と心が通じあった彼女は、今も隣にいる。