きらめきは、一瞬。
光が消えてゆく過程を見たくない。
綺麗なものよ、永遠にそのままでいて。
落ちぶれるくらいなら、いっそ消えてしまえ。
瞬きをしたその隙に、そっと。
いつだって車道側を歩くし、
重たい荷物は持たせない。
もちろん夜道は迎えに行って、
ドライヤーは僕の役目。
落ちた毛布は掛け直してあげるし、
君の好きなグレープフルーツジュースは常に
冷蔵庫にストックしてあるよ。
遠回りで、分かりにくくてごめんね。
僕が君に一途ってこと、伝えたいだけなんだ。
君のことを忘れた訳ではないし、
今更やり直したいなんて思ってもいないけれど。
こんな形で合鍵を回収し忘れていたことに気づくなんて
あの頃の僕はしっかりと盲目だったのだろう。
強盗じゃないよ、と両手を挙げてひらひらさせる君は
最後の夜よりどこか大人になっていて、
不覚にも魅力的だと思ってしまった。
取りに来た忘れ物がなにかは知らない。
でも、僕が帰宅する時間に居合わせたのは
偶然ではないと信じたい。
彼女が去って、玄関の鍵をかける。
僕の思い出にも、鍵をかけた。
雨の日が好きだ、と彼女は言った。
晴れの日は苦手。私には眩しすぎる、と続けた。
10代の女の子にしては冷めているその眼差しは、
窓の外を捉えたままで僕の方に向くことはない。
帰り際、彼女は華奢なその腕に似合わない、
黒い無骨な傘をさしていた。
その傘の持ち主は、彼女に傘を差し伸べる距離にいる。
その「存在」に今更ながら気づく。
雨が降っているのは、僕の方だけか。
私は日記が書けない、続かない。
気軽に写真を撮ることも無い。
なにか残すための術はたくさんあるというのに
それをしてこなかった。怠惰。
私は、なにを忘れた?
その中にかけがえのないものはどれほどあった?
わからない。
わかったら、それを後悔と呼ばなくてはいけなくなる。
忘れることで楽になる心もあるのだから、
今はただそっとしておいて。
また、明日。