雨の日が好きだ、と彼女は言った。晴れの日は苦手。私には眩しすぎる、と続けた。10代の女の子にしては冷めているその眼差しは、窓の外を捉えたままで僕の方に向くことはない。帰り際、彼女は華奢なその腕に似合わない、黒い無骨な傘をさしていた。その傘の持ち主は、彼女に傘を差し伸べる距離にいる。その「存在」に今更ながら気づく。雨が降っているのは、僕の方だけか。
8/27/2024, 11:57:03 AM