君のことを忘れた訳ではないし、
今更やり直したいなんて思ってもいないけれど。
こんな形で合鍵を回収し忘れていたことに気づくなんて
あの頃の僕はしっかりと盲目だったのだろう。
強盗じゃないよ、と両手を挙げてひらひらさせる君は
最後の夜よりどこか大人になっていて、
不覚にも魅力的だと思ってしまった。
取りに来た忘れ物がなにかは知らない。
でも、僕が帰宅する時間に居合わせたのは
偶然ではないと信じたい。
彼女が去って、玄関の鍵をかける。
僕の思い出にも、鍵をかけた。
8/28/2024, 11:37:57 AM