「香水付けてる……?」
私が聞くと彼は頷いた。
香水を付けることに反対はしていないけど、少しだけ背伸びした彼に驚く。
香水を纏った彼は普段よりも大人な雰囲気でなんだか彼じゃないみたい。
今までの私たちの思い出も飾り付けられているようで
少しだけ寂しくなった。
言葉はいらない、ただ私の居場所が欲しい。
私を気にかける言葉なんて、私を励ます言葉なんていらない。だから私に居場所をください。
空気のように扱っていいから、私に居場所をください。
突然の君の訪問。
いつも君は突然やってくる。
何の前触れも無しに突然。
でもいつもタイミングが良い。
僕の心の悲鳴を聞きつけて飛んできたかのようだ。
心友って触れ合わなくても不思議と繋がっているんだな。
"雨に佇む"
書店で目を惹かれて買ったこの古本。
本当に雨に佇んでいたかのように雨の跡がある。
雨なのか涙なのか今の私はまだ知らない。
私の日記帳はまっさらだ。
書きたいことが沢山あるのに書けない。
だってこれは本だと思われているから。
来る人はみんな「この本まっさらなんだね」と零して隣へと足を進める。
これは本なんかじゃないの、大切な日記帳なのに。
書くことが出来ない。私の意思ではどうしようも出来ない。私がみんなに忘れられるまでこの日記帳は本として扱われるのだろう。
人間はいつもそう。
直ぐに決めつけて勝手に想像する。
私なんて"本を持った人形"なんて勝手な名前を付けられて展示されている。
私を作ってくれたママは「沢山の人に見てもらえるだろうから嬉しいことがあったらこっそり書くのよ」って私にまっさらな日記帳を持たせてくれた。
それなのにママは私の名前を伝える前に死んだ。
だから美術館の人が勝手に"本を持った人形"なんて付けた。本じゃなくてママがくれた大切な日記帳なのに。
私の日記帳、それは日記帳とすら思われていない
まっさらな私の人生みたいな本