【目覚めるまえに】
「これは明晰夢ってやつか」
僕は突然夢の中で夢だと気がついた。
しかし僕の知ってる明晰夢とは少し違っていた
僕が知ってる明晰夢ではこれは夢だって気がついたら
夢の中で自由に動けるはず。
なのにこの夢はまるで
知らない街で過ごす知らない誰かの人生
という映画を見ているようだった。
ただそれにちっとも不満を抱かないくらい
その街は綺麗でこの人は幸せそうだった。
「僕の人生もこうだったら良いのに」
そう思うと僕は急にある衝動に駆られた。
『僕もこうなりたい』
という。
さっきまでは理想論だったのに急に行動的になった。
「目覚めるまえに…この夢を忘れないようにしっかりと脳に書き込もう」
そんなこんなで目覚めた僕は
退屈な日常から抜け出して
文字どうり夢を叶えるための一歩を踏み出した。
目覚めるまえのあの場所に行くために。
【病室】
僕は窓から見る景色が好きだ。
学校の窓からでも家の窓からでも
外の景色を見ていると
時の流れさえたまに忘れてしまう。
ただここ数年は一度も景色を見ていない。
目の病気になってしまった僕は見ることが出来なくなってしまったのだ。
初めは絶望したしかし手術を受ければまた目が見えるというのだ。
今日やっと手術を受けた。
見えるかどうかは僕が目を開けてみないと分からないらしい。
期待と不安が入り混じった気持ちで勇気を出して目を開けた。
病室からの景色は今まで見たどの景色より
鮮やかで輝いていた。
その時僕の頬に温かいものが流れている気がした。
自分が泣いていることすら気づけないほど、
見惚れていた。
どれだけの時間が経っただろう。
また時間を忘れてしまったようだ。
【明日、もし晴れたら】
明日、もし晴れたら
山に行って、綺麗な空気を味わおうか
川に行って、冷たい水と戯れようか
海に行って、光に照らされ煌めく貝を拾おうか
街に行って、温かい道を歩こうか
嗚呼、明日が楽しみだ。
だから明日よ晴れであれ!
私は音が好きだ。雑音ではない、美しいあの波に耳を澄ませる瞬間が好きだ。
しかし、人の声は美しい波を遮る。
人の話は嫌いではない悦びに溢れた話や楽しさが広がっていくような話はむしろ聞いていたいぐらいだ。
ただ、人が話すのは何しろそんな良いものばかりではない悲しみや怒りで溢れた音を聞きたくはない。
それに比べて自然の音はどれもこれも美しい。
私はそっと自然に耳を澄ます。ただただ美しい世界の音が良く聴こえる。
だから私は一人でいたい。