【勿忘草(わすれなぐさ)】
「これ、受け取ってください。」
そう言って手に持っていた花を渡す。
「特に深い意味は無いですから。」
そんなことないけど。
意味しかないけど。
あなたを困らせないように。
「お花?ありがとう。」
不思議そうにしながらも、手に持った花を眺めてニコニコとするあなた。
好きなんですよ。
ずっと。
思いが通じ合う前も、後も。
ずっと。
でも、あなたは僕を置いて行ってしまう。
言葉にすることが出来なかった思いを伝えたくて。
気持ちだけでも、と。
あなたに花を贈った。
勿忘草。
真実の愛。
僕を忘れないで。
きっとあなたの事だから、口に出して言わないと伝わらないのだろう。
それでも良いのだ。
あなたが、ふっ、と笑い、口を開いた。
「そっちこそ、忘れたら承知しないから!」
「行ってきます。」
僕が思っていたよりあなたは鋭かったようだ。
るあ
【旅路の果てに】
色々なところを旅してみて、1つ気付いた事がある。
日本だけじゃなく、外国にも行った。
どこも綺麗で、凄く魅力があった。
でも。
何か足りないと。
心の穴を埋めるために始めた事だったけど、余計に穴が深く、さらに深く、抉れたような気がする。
僕の心の穴を埋めることが出来るのは君だけだ。
君以外受け付けないし、あり得ない。
パズルのピースも同じだ。
ピースが無くなってしまったら二度とパズルが完成することはない。
君が。君が居なくなってしまったから、僕はもう。
完成できないから。
戻ってきてよ。
「....戻って、来るわけない」
だって、君は。
「、もう、、この世に居ない。」
るあ
【I LOVE...】
I love you.
私はあなたが大好きです。
そんなくさい台詞を言ったら、君はどうするだろうか。
君の性格だから馬鹿にしたように笑うかな。
それとも、顔を赤く染めてくれるかな。
分からない。
僕はそんなこと言えないし、言わないから。
今までも、これからも。
意気地無しの僕には出来ないや。
君が好きだ、と。
それだけなのに。それだけでも。
僕は出来ない。
臆病でごめんなさい。
もし君が、僕の事を好きだったら。
そんなわけないのに、考えてしまう。
伝えられない言葉は、心の中で呟いて。
大好きだよ。君の事が。
僕が本当に口に出して君に伝えるのは、もう少し先のお話。
るあ
【街へ】
街へ行こう。君に会うために。
ここしばらく、君と会うことが出来ていない。
お互い成人して君は街へ行ってしまった。
僕は家業を継ぐため、ここに残った。
高校時代は楽しかったな。
ずっと一緒だった。
君と離れてから約1年。
君は僕の事を覚えているのだろうか。
もしかしたら他にいい人を見つけているのかもしれないな。
街には僕なんかよりずっといい人がいるだろうから。
君と約束したわけでもない。
ただ、またね、と。それだけ。
それだけなのに。
僕は君を思い続けている。
もし、君が僕の事を覚えていて。
まだ、好きだと言ってくれるなら。
期待、しても、いいかな。
一途だった君を信じて。
「今、会いに行きます」
るあ
【優しさ】
「優しい、ですね」
ふわりと微笑みながら、君が言う。
君の目には僕が優しく映っているのか。
違うよ。
僕は優しくなんかない。
君は上辺だけの、造られた優しさに騙されてしまっているんだよ。
きっと、僕は。
優しさを知らない。
幼い頃から愛情を受けずに育った。
愛情とは何か。優しさとは何か。
大人になった今でも分からない。
僕は君が好きだ、そう思う。
好きとか、嫌いとか、分からないから、曖昧なんだ。ごめん。
僕は僕なりに君に愛を伝えているつもりだ。
伝わっているかな。
真似しただけの優しさに、暖かさなんてあるのだろうか。
「大好きです」
ギュッと抱きつきながら言ってくる君。
とても、とても、暖かい。
こんな僕なんかより。
ずっとずっと、優しさに溢れている人が居るじゃないか。
優しい君へ。
僕の未熟な愛を受け取ってください。
るあ