【木枯らし】
「やっと、逢えた」
あなたがそう言った瞬間、ビュッと木枯らしが吹き抜けた。
この瞬間を何年待ったことか。
あなたに逢える日が来るのをどれだけ待ち望んでいたことか。
あの日、"待ってて、"と言われた時から。
ずっと待ってた。
ずっと。それはもう、ずっと。
何か言おうと口を開く。
「遅いです、どれだけ待ったと思ってるんですか」
パッと口をついて出た言葉は思っていたこととは違う、刺のある言葉だった。
違う。こんなことが言いたい訳じゃない。
静かな空間が広がる。
何か、何でも良いから言ってほしい。
木枯らしがまた、吹き抜けた。
今となっては僕もビュッと、去ってしまいたい。
「そんなとこも、可愛い、」
あなたは優しいですね。
だから、ここまで待てたのかもしれない。
「大好き、愛してる」
あぁ。懐かしい。この会話。
戻ってきたのだな。
こんな日くらい、素直になっても良いかも、なんてくだらないことを考える。
「僕も、大好き、です」
るあ
【美しい】
僕にとって何の色味も無かったこの世界を鮮やかに彩ってくれたのは、間違いなく君だ。
この世界がこんなにも美しいと気付かせてくれたのも、まだ生きていたいと、思わせてくれたのも。
君と出会って僕は間違いなく変わった。
君の明るさに触れて、戻れなくなってしまった。
何があっても君からは離れられないだろう。
そうなってしまったのは君のせいだ。
世間一般では"依存"とも呼ばれるこの感情は、僕にとって無くてはならないものだ。
君も僕に依存してくれたら良いのに。
大好きだよ、この世界で一番。
この美しい世界で、美しい君と共に。
るあ
【この世界は】
僕が生きているこの世界は、きっと神様がいる。
そう、信じている。
いつか外の世界に出てまた皆と仲良く遊べると。
いろんなことに挑戦して、自由に暮らせると。
願っている。
この世界は希望なんて無い、残酷な世界だ。
どれだけ神様に願っても叶えてなんてくれない。
そもそも、神様なんて居ないのかもしれない。
それでも僕は。
来るかもしれない、いつかを夢見て、待ち続けるだけだ。
この狭い、狭いコンクリートに囲まれた部屋の中で。
るあ
【どうして】
どうして。あなたは。
俺を置いて行ってしまったの。
あなた無しでは、何も出来ないのに。
飽きられたのか。
それともただ嫌われてしまったのか。
何が駄目だったのだろうか。
言って欲しかった。
今更そんな事を言ってもあの人は戻ってこない。
そう思うだけで涙が溢れた。
「、ッ戻って来て、くださいよ、」
俺の大好きな人。
どうして、ですか。
離れないでって、言ったのに。
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「ごめん、」
嫌いになった訳では、全く無いんだ。
君から選択を奪ってしまうような気がして怖かったんだよ。
君という人の未来を決めてしまいたくなかった。
意気地無しでごめんね。
心の中でしっかりと決心したはずなのに。
こうも心が痛むのは、どうして、だろうか。
るあ