【木枯らし】
「やっと、逢えた」
あなたがそう言った瞬間、ビュッと木枯らしが吹き抜けた。
この瞬間を何年待ったことか。
あなたに逢える日が来るのをどれだけ待ち望んでいたことか。
あの日、"待ってて、"と言われた時から。
ずっと待ってた。
ずっと。それはもう、ずっと。
何か言おうと口を開く。
「遅いです、どれだけ待ったと思ってるんですか」
パッと口をついて出た言葉は思っていたこととは違う、刺のある言葉だった。
違う。こんなことが言いたい訳じゃない。
静かな空間が広がる。
何か、何でも良いから言ってほしい。
木枯らしがまた、吹き抜けた。
今となっては僕もビュッと、去ってしまいたい。
「そんなとこも、可愛い、」
あなたは優しいですね。
だから、ここまで待てたのかもしれない。
「大好き、愛してる」
あぁ。懐かしい。この会話。
戻ってきたのだな。
こんな日くらい、素直になっても良いかも、なんてくだらないことを考える。
「僕も、大好き、です」
るあ
1/17/2024, 11:16:25 AM