やわらかな光に包まれて、時間の標本を作る。世界で貴方たった1人だけが花に包まれているかのような、そんな感覚。
何処か無機を感じる表情に紅を引いて、真っ白の菊を敷き詰めて、扉を締める。
もう会うことは出来ない。顔は見れない。さよなら、愛する人よ。出来ればもう一度だって逢いたくないよ。
鋭い眼差しに目を貫かれると怖くなる。声が出なくなる。違う。違うんだよ。そんな事じゃあない。そんなこと言わないから怒らないで。
死にたい訳じゃあないよ。ただ、生きたい訳でもない。皆が大切にする家族も、これからの決まってる未来も、全部僕からすれば簡単に捨てられるもので、同じく。死ぬことも簡単に出来る。ただ、大切にすべきものが見当たらない。生きることは経験を積むと言うよりも苦しみを積むに等しい。それを詰んだとして、一体その奥には何がある。
家族も恋人も、愛していない訳では無い。ただ、生きる理由が見当たらないだけだ。
死にたい訳じゃないから、だからどうか、怒らないで。
カーテンの上がった先では踊る貴方。
舞台の上のあなたは何時もよりも、酷く美しく見える。
けれど、今まで生きてきた中で、何か一つでも人に褒められたことがあるとすれば、それは貴方が凄い訳じゃない。周りが出来ていなさすぎただけだ。
舞台で踊る人が美しく見えるのは、映画が美しく映えるのは、花火が鮮やかに散るのは、星が夜空を照らすのは、1輪の大きな花が美しく見えるのは、周りが綺麗に見えるのは、それを作るまでの努力のおかげじゃない。周りが暗くて、その人だけが明るいから美しく見えているだけ。隣に光り輝く宝石を置けば皆宝石の方を見る。
それでも、今だけは、貴方が1番美しいと、認めたい。
涙の理由は聞かないでもらいたかった。貴方の言葉を無視したくないから。
突然に飛び降りたい衝動に駆られることがある。ここから落ちれば僕はきっと死ぬだろう。そしたらきっと君は灰になるまで一緒に居てくれるだろう。
君なしでは生きていけないからこそ、君の目の前で死んでしまいたいんだ。
嗚呼、僕には分からない!まったくもって、分からないのだよ。なぜ僕は生きていなければならならいのか、そんな疑問を持って生きる今に価値はあるのか、面白かったはずのものがつまらなく枯れていく…僕が段々と枯れていく。これ以上生きていたくないんだ。
巡り会えたら、また、もう1回巡り会えたなら。約束を守れなかったことを謝ろう。君の声を忘れたことを謝ろう。
こんな僕にまた会ってくれるのならば、どうか、僕にチャンスをくれ。まだ言えていないんだ。愛してるも好きもありがとうも。
また、巡り会えたなら。