紅茶の香り
日曜の午前中、紅茶の香りで目が覚める。
「今日はコーヒーじゃないの?」
彼
「もらったんだ。ウバ紅茶って言うらしい。ミントの香りしないか?朝はこれがいいらしい。」
確かにミントのようかスーっとした香り。
コーヒー好きな私としては、紅茶はなんだか物足りない。せっかく彼が入れてくれたので、飲んでみる。ミントの香りとキリッとした苦味。確かにこの紅茶を飲むと目が覚める。
彼
「どう?美味しい?」
私
「うん、美味しい。でも、朝はやっぱりコーヒーかな〜」
彼は笑いながら
「そう言うと思ったよ。俺、スリランカで暮らそうと思ってる。インド洋に浮かぶ島国だ。付いて来るか?」
私
「私はね、パリに行ってパティシエの勉強をしたいと思っている。もしかして、私達、お別れかしら?」
彼
「そうだな。俺には後にも先にも君しかいないけど、やりたい事をやるよ」
私
「私もあなたしかいないけど、やりたい事をやるわ」
そして私達はウバ紅茶でスッキリ目覚めて、決断した。
愛している彼とまで別れて決めた夢だ。もう、後戻りはできない!
前に進もうどこまでも!
愛言葉
あなたは「言わなくてもわかっているだろう」と言うけれど、わかっていても言ってほしい。
「愛している」
愛言葉。
海の底はもう遠い。
愛言葉を聞かせてほしい。
私が泡となって消えないように。
もう、人魚姫ではないのだから。
この愛が永遠であるように。
愛しています。
友達
大好きな彼と四年前に結婚した。結婚して二年ぐらいは、楽しく充実した毎日だった。同じ歳だった私たちは、三十歳も近くなると、仕事も任される事が多くなり、一緒の時間も少なくなってきた。疲労と忙しさでお互いを責めるようになった。そして、とうとう離婚することになった。
彼から
「これからは友達でいよう」
と、言われた。
友達なんかでいられるんだろうか?あんなに愛し合った二人なのに。これからまた、好きな人ができて結婚するかもしれない。友達として祝福できるだろうか?
友達、、、。
まだほんの少しだけ貴方を好きな私には辛い事だ。
きっとスマホからは貴方の名前は削除する。
さよなら、、、。
行かないで
「そうやって一人でどんどん行かないでくれ!頼む!ここは無理だ!お願いだ戻ってくれ!」
彼女に秋の紅葉を見に行こうと誘われた。あまりアウトドアなデートは好きではないが、コロナも落ち着いたし、行ってもいいかなと思い、栃木県那須塩原市まで来た。そして僕の目の前に、「もみじ谷大吊橋」全長、320m。
本当にひどい彼女だ!
僕が高所恐怖症だということを知っていて、ここに連れて来たのだ。
「下を見ないで前を見て、ほら、こんなに綺麗よ」
何が綺麗だ!こっちは25年間、ずっと高所恐怖症だったんだぞ、お前に俺の気持ちがわかるか!
しかも、こんな長い吊橋。住んでいるマンションだって一階だ。
せめて、東京タワーから練習させてくれ!
僕を置いて、どんどん渡っていく彼女。
「おーい!行くなー!お願いだー!行かないでー!」
どこまでも続く青い空
どこまでも続く青い空。こんなに綺麗な空を見ても、心が晴れない。貴方との別れが辛い訳じゃない。別れはお互いが望んでいた事だから、本当は晴々とした気持ちだ。なのに、今日は憂鬱だ。何故だろう。こんな晴れた日に、家に1人でいるからだろうか?何をすればいいのか?彼氏と別れるということは、休日、暇になるということか?掃除もしたし、眠くもない。
1人でどこかに行くのは苦手だが、少し近所を歩いてみよう。
もう三年も住んでる街なのに、こんなところにかわいいカフェ。もう少し歩いてみると、怪しげな雑貨屋さん。えっ!こんなところに銭湯あったの?駅前のペットショップに、シュナウザー犬の赤ちゃんがいる。手を繋いだ高齢の夫婦。昼間から焼き鳥屋で一杯飲んでいる、おじさん。
コンビニでサンドイッチを買って、公園の芝生で食べた。
なんだか楽しい。どこまでも続く青い空の下で、少しずつ一人でできる事を増やしていこう!
新しい、出会いがあるまで、、、。