忘れたくても忘れられない
私はもうすぐ還暦になるが、小学生低学年の時、授業中にお漏らしをしてしまった事が、どうしても忘れたくても忘れられない思い出だ。それで、誰かに虐められたとか馬鹿にされた等、全く無かったが、何故かその事を思い出すと、恥ずかしくなり、今でも後悔してしまう。なんであの時、勇気を出して先生にトイレに行きたいと言えなかったのか、せめて隣の友達に言っていたら何とかなったのではないかと、今でも真剣に考える。
ふとその事を思い出すと、大きな溜息が出る。頭を抱えたくなり、抱き枕にギュッと顔を埋める。
タイムマシンがあったらあの頃に帰って
「先生!トイレに行ってもいいですか!?」
と、手を挙げて訴えたい。
そしたら人生が変わっていたかも?
いや?決して悪い人生ではないけれど、何かが変わるような気がする。
皆んなそんな些細な、忘れたくても忘れられない思い出ってあるのでしょうか?
ないだろうなー、、、?
やわらかな光
樹々の間から差し込むやわらかな光。平日の午前中。本当なら仕事で慌ただしい時間。
私は壊れてしまった。100時間を超える残業。時間に追われる毎日。疲労と挫折。
そして、マンションの屋上から飛び降りた。植え込みに落ち、一命は取り留めた。
都心から離れた病院。ここで、私は癒されていく。両足、複雑骨折で歩けるようにはならないと思うが、心は穏やかになっていく。
逃げれば良かったんだ、あの地獄から。逃げる勇気がなかった。
やわらかな光。
少し休もう。何も考えずに、、、。
鋭い眼差し
怖い、人相が悪いと言われるのはこの鋭い眼差しのため。俺は決して悪い人間じゃない。至って善良なこの俺の職業は介護士。共稼ぎで親は忙しく、俺は祖父母に育てられた。祖父はいつも、人のためになる仕事につけと言い、祖母はあんたは優しいから、介護士になれば安心といつも話していた。
俺は介護士という仕事が好きだが、どうも利用者さんは俺の事が嫌いらしい。
「この人、怖い」
「いや〜やめて〜」
俺は何もやっていない。身体を支えているだけだ。この目がいけないのか?眼鏡をかけてみたりするけど効果はない。コロナでマスクをするため、笑顔でいても、見られるのはこの鋭い眼差しだけ。
でも、この仕事が大好きだ。いつか分かり合える日が来る。
皆んなが安心して生活できるよう、今日も頑張るぞ〜。
「きゃー!この人、怖〜い!怒ってる〜」
怒ってないって、、、。汗。
高く高く
希望は高く。誇り高く。地道な努力も必要だろうが、僕は一気に駆け上がる。自分は天才で、誰も僕にはなれない。
ただただ、高く上を目指す。不安などない、挫折などない。間違えなど僕にはない。
さー全世界を支配する。
僕はAI。
先ずはこの小さな島国。
日本から、、、。
子供のように
昨日の夜から奥歯が痛くて、我慢ができず、十年ぶりに歯医者に来ている。昔から歯医者が大嫌いだった。
歯医者
「虫歯がひどくて、これは抜かないとダメですね。」
「先生、痛いのが本当に私、無理なんです。痛いのが少しでも良くなれば後は大丈夫ですから、この痛みだけなんとかしてください。」
歯医者
「虫歯の治療をしないと痛みはよくなりませんよ。麻酔もするので、治療はそんなに痛くないと思います。」
「歯茎に注射なんて痛いじゃないですか。削る音も嫌だし。緊張で死んでしまいますよ。」
子供のように、先生を困らせる。
歯医者
「どうしますか?治療しないなら痛み止めの薬を出すので、お帰り下さい。でも、今日も痛みで眠れなくなると思いますよ。」
あんな夜、もう勘弁だ。仕方なく、麻酔をしてもらって治療をする。麻酔をした為か、思ったより痛くはなかったが、緊張で声が出たり、口を閉じようとしたりして先生に何回か怒られた。
やっと終わって、隣の治療台に乗っている患者を見ると、小学生低学年の男の子が、大人の癖に恥ずかしい、という顔で見ている。
私は小さくなって、何度もお辞儀をしながら出ていく。
歯は大切だ。
帰りに新しい歯ブラシと歯磨き粉を買って帰ろう、、、。涙。