放課後
放課後、教室の窓から外を見る。校庭の隅でストレッチをしている彼。陸上部の彼は誰もが認めるイケメンだ。彼と付き合いたいと思っている女子は沢山いる。
ふと見ると、教室の窓から同じように彼を見ている女子が数名。彼が人気があるのは仕方ない。皆んなに優しく、モテることを鼻にかけることもなく、ユーモアもある。
女子生徒が数名、僕のところに集まる。
「ねー幹太、渉は誰か好きな人いるの?どんなタイプの人が好きか聞いておいでよ」
「あいつの好きな人なんか知らね〜よ〜。自分で聞けよ」
「自分で聞けないから幹太に聞いているんじゃん。ねっ、お願い」
「わかったよ、今度、聞いてやるよ」
そんな会話が終わり僕は教室から出る。校庭の渉のそばに行き、
「渉、女子が教室からお前を見てるぞ、渉の好きな人は誰かとか、好きなタイプを俺に聞いてこいってうるさいんだよ。ほら手でも振ってやれよ。」
渉が小声で、
「俺が好きな人は、幹太お前だ。練習が終わったら、お前の家寄るから。二人で過ごそう。愛しているよ幹太。」
そして、女子に向かって手を振る渉。そう、僕達は愛し合っている。学校では親友だけど、本当は付き合っている。
「待ってるよ、じゃあな」
と言って別れる。
皆んなからすれば、いつもの放課後。でも、僕と渉にとっては約束の確認をする、特別な放課後、、、。
カーテン
水色のカーテンがふわっと膨らんだ。微かに金木犀の香りがする。軽く寝返りをうってみる。背中の筋肉が少し痛い。昼食のあと、本を読みながら眠ってしまった。足下で愛犬が寝ている。
ベランダ側のカーテンは呼吸をする様に、膨らんだり萎んだりを繰り返している。
朝、あんなに鳴っていた電話は今はなく、外も静かだ。
初めて無断欠勤した。僕がいなくても特に問題はないと思うが、上司にしてみれば安否確認と、嫌味の一言が必要なのだろう。
明日はきちんと謝罪しよう。仕事を辞める勇気はないし、人生を放棄することなんかしたくない。
ほんの少し、自分のために抗ってみただけだ。
さー上司の嫌味を聞くために電話をしよう。ちょっとした嘘は許してほしい。
、、、呼び出し音、、、
「もしもし、、、◯◯です、、大変申し訳ありません、、、、。
、、、、。明日は出勤します、、、。ご迷惑をおかけししました、、、。」
涙の理由
教室の隅で一人泣いている彼女。涙の理由は、このクラスの全員が知っている。彼女は一ヶ月前からいじめられている。今日は靴がないみたいだ。学校のスリッパを履いている。いじめのターゲットになったら、もう誰も止められない。担任も多分、わかっているだろう。
早く親に言って、不登校になるか転校した方がいい。でないと傷が深くなるばかりだ。
あの子が学校に来なくなったら、次のターゲットは私だろうか?
私がターゲットになったら、やる事は一つ。私に憑いている死神に、リーダー格の彼女を消してもらう。それで終わる。罪悪感?そんなものない。私が命令して、死神が殺す。これで十人目だ。
少しいじめられることを期待もしている。正当な理由なく人殺しはしたくない。
さ〜待ってるよ。
◯◯ちゃん、、、。
ココロオドル
留学から、一年振りに帰ってくる彼に会える。ココロオドル。
丘の上に立つ彼。走り寄る。
言葉なく、ぎゅっと抱きしめられる。やっぱりこの人が大好きだ。
彼、
「会いたかった。英語を勉強しにアメリカに渡ったけど、ユキがいない毎日は耐えられない。後、二年あるけれど、もうやめた。行かないからずっと一緒にいよう」
えっ!それは違うだろう。自分がホームシックなだけじゃん。ちゃんと勉強してよ。
あー冷めた。
束の間の休息
僕は動物園の飼育員をしている。担当している動物はライオン。ネコ科の動物だが、体重は150kg以上ある。昼間はほとんど寝ているが、エサの時間になると牙を剥き、大きな肉の塊を貪り尽くす。
エサを置く時や、檻の中の掃除の際は、ライオンを別の部屋に移し作業する。
百獣の王、ライオン。襲われたら必ず死ぬだろうが、毎日世話をしていると可愛くなる。
今日もエサの準備、檻の中の掃除、エサやり、一日中働きっぱなしで疲労が溜まっていた。
束の間の休息。小部屋に入ったライオンを檻に戻す作業。いつもの慣れた作業だった。考えなくても体で覚えている作業。
なのにこの日は手順を間違えた。
背後からメスのライオンに襲われた。首を噛まれ、噛まれたまま中を舞う。戯れているのか、お腹が空いているのか、僕を離さない。
意識が薄れ、抵抗できなくなる。
目が覚めると、病院のベッドだった。助かった。
ただ、右手はなかった。
あーもう飼育員は無理だな。
大好きな仕事だったのに、、、。