束の間の休息
僕は動物園の飼育員をしている。担当している動物はライオン。ネコ科の動物だが、体重は150kg以上ある。昼間はほとんど寝ているが、エサの時間になると牙を剥き、大きな肉の塊を貪り尽くす。
エサを置く時や、檻の中の掃除の際は、ライオンを別の部屋に移し作業する。
百獣の王、ライオン。襲われたら必ず死ぬだろうが、毎日世話をしていると可愛くなる。
今日もエサの準備、檻の中の掃除、エサやり、一日中働きっぱなしで疲労が溜まっていた。
束の間の休息。小部屋に入ったライオンを檻に戻す作業。いつもの慣れた作業だった。考えなくても体で覚えている作業。
なのにこの日は手順を間違えた。
背後からメスのライオンに襲われた。首を噛まれ、噛まれたまま中を舞う。戯れているのか、お腹が空いているのか、僕を離さない。
意識が薄れ、抵抗できなくなる。
目が覚めると、病院のベッドだった。助かった。
ただ、右手はなかった。
あーもう飼育員は無理だな。
大好きな仕事だったのに、、、。
力を込めて
力を込めてドアを開く。これが最後の砦だ。ここがダメならもう諦めるしかない。心臓の鼓動が速くなる。何度もネットや電話で調べた。どこもダメだった。
ふと通りかかったショップ。もしや、、、。ダメ元で聞いてみた。
「すみません、四ヶ月男の子、ブラックのシュナウザーいますか?」
「いますよ〜。あそこの隅っこにいる子。抱っこしてみます?」
いた〜。シュナウザー犬。
かわいい!欲しかったの〜シュナウザー犬。
即買いした。
諦めないで良かった〜。
今日からよろしくね〜。
過ぎた日を想う
今、彼と別れてきた。交際期間、四年。何故、別れたか?私にもよくわからない。ただ言えることは、もう彼を愛していなかった。
四年前、同じ大学の心理学の時間、たまたま隣に座ったのが貴方だった。朝までアルバイトをして、心理学の授業は眠ってしまい、ノートを貸して欲しいと言われた。連絡先を交換し、後日、ノートを返してもらうために、一緒にご飯を食べに行った。
それから何度か会い、付き合うことになった。
一緒にディズニーランドに行って、
「やっぱり、シンデレラは可愛い」
と言うので、私はシンデレラが嫌いになった。
初めて温泉に行った時は、私の浴衣姿を見て
「可愛いよ」
と、言ってくれた。
優しく包み込んでくれる夜が好きだった。
一緒に笑ったり、時々、喧嘩したり、彼しか見えない日々が続いた。
過ぎた日を想う。
たくさん思い出はあるけれど、何故か彼のことが愛せなくなった。お互い、そうだったと思う。私が別れを告げた時、彼はほっとしたみたいだった。
今までありがとう。
貴方を本気で愛していました。
いい人を見つけて幸せになってね。
さようなら。
星座
星座は人間がその並びに意味をもたせたり、形から連想したものに名前をつけたものだ。
都会に住んでいると、夜空を見上げる事も少ないが、星座から神話を思い浮かべる人も多いだろう。
地球も星の一つであるが、宇宙には無数の星がある。その一つの地球に住んでいる事が、とても不思議である。
昔の人は、星から宇宙の成り立ちを考えた。今は星から自分の運命を占う。
星はそして星座は、私達の過去であり、未来である。
時々、夜空を見上げて神秘的な気持ちになる事もいいものだ。
そして流れ星が見られたら、願い事をしてみよう。
踊りませんか?
「一緒に踊りませんか?」
と、言われた。踊れるわけがないと思った。私は1年前、交通事故で脊髄を損傷し、今は車椅子生活である。リハビリ病院に入院し、やっと家に帰れたばかりである。そんな私に、障害者施設の職員は社交ダンスをやらないかと進める。社交ダンスはステップが重要だ。動かない足でどう踊れと言うのか?
一度、見学に行かないかと言われ、車椅子ダンスをやっている施設に見学に行った。
魅了された。皆、美しく軽やかに、そして楽しそうに踊っている。車椅子の女性を、健常者の男性が見事にリードしている。
車椅子ダンスは助け合ってこそ成り立つダンスである。やってみたいと思った。
そして私の車椅子ダンス生活が始まった。まだまだ、未熟ではあるが、車椅子ダンスを通じて社会参加し、そして、誰もが魅了するダンサーになりたい。
「踊りませんか?」
「もちろんです」、、、。