バズ母

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8/19/2023, 2:21:35 AM



私は10年前、轢き逃げのをして捕まった。轢いてしまった女性は即死。若く、半年後に結婚する予定だったそうだ。
夜中、人気のない道で突然目の前に出てきた彼女を避けることができなかった。
頭からの出血を見て、怖くなった。手が震えた。息ができなくなった。気がつくと車に乗って、その場から逃げていた。
明くる日、警察が来た。防犯カメラに事故の様子がはっきり記録されていた。
捕まり、8年間刑務所に入った。

罪を償い釈放され、自宅に戻った。 自宅に戻りこれからどうやって生きていこうか考えると眠れない。夜中の0時に洗面所に行く。洗面所の鏡を見ると、自分の後ろに白い影が、、、。
ウエディングドレスを着て、頭から血を流している彼女が自分をじっと見ている。恐怖で叫ぶこともできない。

それから毎日、午前0時に目が覚める。鏡のところに行かなければいいのに、意思とは反対に身体が鏡の前に行きたがる。

それが3ヶ月も続くと、彼女に恋をしているような感覚になる。会いたい、彼女に会いたい。その時はもうすでに取り返しがつかないほど、おかしくなっていたのだろう。

半年後、鏡の中の彼女を抱きたいと思うようになった。
そして、僕は彼女を轢いたあの場所で車に飛び込んだ。
これで鏡の中の彼女に会える。
彼女を愛している、、、。

8/17/2023, 4:25:30 PM

いつまでも捨てられないもの

私が小学校一年生のクリスマスに、妹はリカちゃん人形を、私はオルゴールをサンタさんにお願いした。
小さなクリスマスツリーを飾り、家族で苺のケーキを食べた。
外で微かな音がしたため雨戸を開けると、そこには綺麗な包装紙に包まれたプレゼントが二つ。
あの頃は本当にサンタが来たと思って、物凄く興奮したのを覚えている。   包み紙を綺麗に取って箱を開けると、淡い黄色の蓋のところにクマが付いてるオルゴールが入っていた。箱から出して、底のネジを回し蓋を開けると、ゆっくりと音が鳴り始まる。
曲はトロイメライ。
嬉しくて嬉しくて何回も聞いた。

あれから60年が過ぎた。
結婚して家を出た時も、バツイチになって家に戻ってきた時も、引っ越しをした時も、いつも大切に持って行った。
オルゴールの色も剥げ、クマの飾りも欠けてしまった。中のオルゴールも少し錆、音もなんだか弱くなったような気がする。
それでも、いつまでも捨てられない。
今は両親も亡くなり、そのオルゴールは両親の仏壇の横にある。
幼い頃はサンタからのプレゼントだと思っていたけど、このオルゴールは両親からの贈り物である。
これからもずっと側に置いて、時々、トロイメライの音楽を聴きながら優しい両親を思い出す。
🎵🎶♪♫

8/16/2023, 11:40:16 PM

誇らしさ

息子が有名大学の医学部に合格した。
私は誇らしさでいっぱいになる。
医者を目指すと息子から聞いた時は恥ずかしながら泣いてしまった。

中学の時に癌で父親を亡くした。
息子にとって父親がどんな存在だったかはわからない。男同士だからあまり口も効かず、将来のことを二人で話し合うこともなかった。  毎日、仕事に行く父親の背中を見送るだけだった。
そんな父親からもらった最後の一通

 幹太、俺はおまえに何もしてあげられないうちに死んでしまう。死ぬ覚悟はできたが、おまえの将来について一緒に悩んだり喜んだりできないことが悔しくて仕方がない。
早いうちにいろんなことを話しておけばよかったな。父さん、不器用だからいつも母さん頼りで、おまえに何も教えてあげられなかった。
だけど、おまえは俺にとって自慢の息子だ。父さん知ってぞ、おまえ医者になりたいんだろ。勉強頑張っているのも知ってる。
金のことは心配するな。家族のために頑張って稼いだ金だ。遠慮なく使え!
幹太、父さんずっとおまえを応援しているからな!頑張れよ!
母さんを頼むぞ!

その手紙を読んで息子は泣いていた。それからの息子は本当に頑張った。学校が休みの日も昼も夜も、、、。大学の合格通知を見て二人で泣いた。

さー幹太、これからが本番だ!
父さんも応援している。気合い入れていきな!

8/15/2023, 2:04:34 PM

夜の海

夜の海に海の怖さを知らない人は近づいてはいけない。
あの単調な波の音に吸い寄せられ、真っ黒な海に近づくと、何本もの手が海から出て足を掴まれ、海に引き摺り込まれる。
生きては帰れない。
その手は誰の手かというと、海で死んだ寂しい死者の手だ。
溺れて死んだ人、自ら海に身を投げた人、殺された人、、、。

いつだったか若い男女が身投げして、男だけが助かった。助かった男は暗い夜の海に彼女が好きだった百合の花を手向けた。
すると真っ黒な海から二本の手が出て、一本の手は百合の花を、一本の手は男の足を掴み海に引き摺り込んだ。
その時、男は何も抵抗せず真っ黒な海に飲み込まれていったという。
子供を海で亡くした母親は、夜の海から出た小さな手を、嬉しそうに握り、親子で手を繋いでいるように海に消えていった。

まだ死にたくないあなた。決して夜の海に近づいてはいけない。
それは覚えておいた方がいい。

8/14/2023, 11:54:54 AM

自転車に乗って

僕が住んでいるのは武蔵小杉、武蔵小杉と言ってもタワーマンションではなく古い小さな家である。
今日は自転車に乗って多摩川を走ってみよう。
先ずは家から丸子橋に出る。
上流方向へ走り出す。直ぐに等々力サッカー場が見える。
河川敷ではゴルフや野球をやっている人達。
頑張って走ると、二子玉の高島屋が見えてきた。
河川敷でバーベキューをしている家族。
二子玉を過ぎてふと見ると、ダンボールで作られた家。ホールレス?なんか見ちゃいけないような気がする。
鴨が泳ぎ、鮒なのかな?時々、跳ねる。
川幅が広くなり、川の向こうは和泉多摩川河川敷。
やっと登戸に着いた。
もっと先に行ってみようか悩んだけど、今日は戻ろう。
ほんの少しの達成感!

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