目が覚めるまでに
私の夫はDV夫である。
最初は些細な嫉妬心からだった。でも、最近は私がそこにいるから、ただただ殴りたいからとエスカレートしていった。
身体はアザだらけ、皮膚をタバコで焼かれ、背中に熱湯をかけられたこともある。
たまりかねて、警察に行くと、その倍殴られる。
「おまえ、逃げたりしたら実家、燃やすからな」
強迫観念から逃げることができなくなった。
耐えて耐えていたが、昨日は酷かった。たぶん肋骨は折れているだろう。
(逃げないと殺される)
私は夫が寝た後、必要最低限の物を鞄に入れた。
夫の目が覚めるまでに逃げよう。
逃げないと絶対に殺される。
荷物を持って玄関に行こうとした時だった。
「おまえ、どこに行こうとしているんだ。まさか、俺から逃げようとしているのか、、、」
ゆっくりと近づいてくる夫。
私は無意識にまな板の上の包丁を掴んだ、、、。もう、殴られるのは嫌だ!
大きな肉切り包丁は夫の肉を裂いた。
ごめんね、お母さん、、、。
病室
病室の窓から見えるもので、哀しくなってしまうもの。
春の桜の花吹雪。
卒業証書を持った学生。
夏の蝉の抜け殻。
大輪を咲かせた後の消えていく花火。
紅葉と落ち葉。
三日月。
流れ星。
初雪。
黒い車。
街灯の下の猫。
想像しただけで胸が熱くなる。
「山本さ〜ん。あら?目が赤いけど大丈夫?
山本さん明日、退院です。
食中毒は怖いですからね。臭いがしたり、時間が経った食べ物はもう食べてはいけませんよ」
「は〜い!すみませんでした。初めての入院が食中毒なんて恥ずかしいです」
そして悲劇のヒロインになっていた自分が恥ずかしい!
明日、もし晴れたら
毎日、体温越えの暑い日が続いている。雨が全く降らず、ダムの水は底をつき、山の草木は茶色く枯れている。
川の水も干上がり、魚の死骸が悪臭を放つ。
熱中症での死者も過去最高とニュースで流れるが、水道から水は出ない。
自衛隊から配られる水ももうギリギリの状態である。
誰もが死を覚悟していた。
そして今日、とうとう日本人全員が期待していた雨が明日降るというニュース速報が流れた。
天気予報でこんなにも雨の予報が嬉しかったことはなかっただろう。
雨、雨、雨、、、必ず明日、降ってくれ!
雨が降らず、明日、もし晴れたら、晴れてしまったら、絶望で自殺者も増えるだろう。
神様!どうか私達に恵みの雨を、、、!
だから、一人でいたい
僕にはどうしてもできない事がいくつかある。
料理はしたくない(ま〜これは男なら料理をしない人も多いだろう)
洗濯もしたくない。夏は臭いが気になるけど、誰にも会わなきゃ構わない。
ゴミを捨てに行かない。なぜか面倒くさい。
愛想笑い。これは全くできない。
会話。続かない。
恋愛。ゲームの推しがいるから寂しくない。
コロナ?人に合わないから怖くない。
お金?今の世の中、外に出なくても稼ぐ方法はいくらでもある。
家の中はどんどんゴミが溜まり、僕の生活スペースは狭くなっていくけど、誰かに会って人に合わせるよりもぜんぜん気楽だ。
だから、一人でいたい
ダメですか?
澄んだ瞳
娘は目が一重だといつも気にしていた。
私はくっきり二重だけど、お父さんはいつも半分寝ているような一重なんだから仕方ない。
娘は高校生の時も大学生の時もアイプチで二重にして通っていた。
大学を卒業し働き始めると、貯めたお金で二重瞼にするプチ整形がしたいと言う。
今の世の中、プチ整形を反対する人も少なくなり、
「自分で貯めたお金ならいいでしょう」
と心の広い親を演じ整形を許した。
お父さんはもともと自分の遺伝であることを気にして、特に反対はしなかった。
整形は凄い!綺麗に二重になった。娘も嬉しそうである。
「整形して良かった!毎朝、アイプチしないでいいし、楽ちん!
これでお父さんだけだね一重」
と言って出掛けて行った。
お父さんは哀しそうに娘を見送り。
「お母さん、一重だって子供の頃、あの子の目はキラキラと澄んだ瞳だったよなぁ〜」
お父さん、もうあの子は子供じゃないし、お父さんより彼氏の方が大事なのよ。
お父さんだって若い時、私のぱっちり二重が好きだって言ってたじゃない。諦めなさい、、、笑。