嵐がこようとも
僕とサチは幼なじみである。
親同士が仲良しで、家族で夏はキャンプ、冬はスキーに行っていた。
学校でも同じクラスになる事が多く「カンタ」「サチ」と呼び合い仲も良かった。
中学、高校も同じで、さすがに二人で一緒に遊びに行くことはなかったが
「カンタは小さい時、泣いてばかっかりいて、おしっこももらしてた〜」
なんて言われムカついた。
サチの周りにはいつも友達が沢山いて、男みたいな豪快な笑いをして楽しそうだった。
僕はというと友達はいたが、静かに読書をしていることが好きだった。
高校を卒業し、サチは化粧も上手くなり綺麗になっていった。でも僕にとってサチは幼なじみでしかなかった。
ある日、サチは沖縄に旅行に行った。
「カンタ、お土産買って来るからね〜」
と元気に出掛けて行った。
二日後、サチの両親からサチが交通事故に遭ったと知らされる。
サチは
「カンタに会いたい」
と言っていると聞く。
その時、初めて気がついた。サチがどんなに大切な存在かを、、。
直ぐに沖縄に行く準備をし、空港に向かった。
テレビでは台風発生のニュースが流れている。
嵐がこようとも絶対にサチのところに僕は行く!
その数時間後、僕は沖縄に到着しサチが入院している病院に着いた。
病室を恐る恐る開けると
「カンタ!来てくれたの!」と元気な声。
「サチ!大丈夫なのかよ」
「大丈夫!助手席に乗ってたんだけど、スマホ見てて頭をゴーンって軽くぶつけただけ、、頭だから軽く検査して異常なかったら退院、お母さん言ってなかった?」
そういえばサチの両親は来ていない。僕にサチの交通事故伝える時、少し微笑んでいたような。もしや、これは騙された?
まーいいか。本当の気持ちに気づくことができたんだから、、、。
お祭り
お祭りといったら、
家の近くの菅生神社
屋台で必ず買うのはキャラクターの袋に入った綿飴
ヨーヨー釣りよりも金魚掬いが好きだけど、金魚はすぐ死んじゃう
浴衣の柄は朝顔
お囃子の笛の音色が好き
必ずカップ酒を飲んでるおじさんがいる
出し物は、漫才よりも手品が面白い
神社のお参りは屋台をまわった後の1番最後
スーパーボール掬いに夢中になって小さな弟をどついてしまうお兄ちゃん
大きな声で泣く迷子
大人になって行かなくなったけど、小さい頃は楽しみだった
今年はお祭り行ってみようかな
ほら、遠くでお囃子が聞こえてる
神様が舞い降りてきて、こう言った
神様、私は一人ぼっちです。
両親は他界しました。夫とはずいぶん前に離婚しました。
娘は海外に嫁ぎ、愛犬は老衰で亡くなりました。
仕事は去年、定年退職しました。
毎日、家で一人読書をしながら過ごしています。
神様、私はこれから先、ずっと一人で孤独死をするんでしょうか。
その時、神様が舞い降りてきて、こう言った。
「心配しなくても大丈夫です。
星ひとみさんの人生占いによると、あなたは2年後素敵な彼氏ができて幸せになれるとでています」
神様、占いって、、、。
神様が占いって言っていいんですか?
誰かのためになるならば
母が急に体調を崩し入院した。
最初は検査入院でしたが、みるみるうちに腹水が溜まり、呼吸さえもままならなくなりました。
いろいろな検査をし、急性リンパ腫と診断され入院して2週間で亡くなってしまいました。
優しい母でした。料理が得意でいつも美味しいごはんを作ってくれました。悲しい事があると、
「お母さんがずっと側にいるよ」
って言ってくれました。
母が亡くなった事が受け入れられませんでした。その時、医師が
「力及ばずすみません。こんな時に大変申し訳ないのですが、お母様の解剖をお願い出来ませんでしょうか。 医療の発展のためと、若い医師の為にご了承頂きたいと思います」
私は妹に相談し妹は
「解剖なんて!苦しい思いして死んだ後も身体を切られるなんて、、、」
と反対する。
私は考えた。これから先、母のように急死する人がいる。
医療が発展し、優秀な医師が育てばきっと母の死が無駄にならない。
誰かのためになるならば、、、。
解剖を決意した。
母の解剖後、葬儀屋さんの車に乗せられ病院を後にする際、病院の医師や看護師、様々な病院職員が頭を下げて見送ってくれた。
私は涙が止まらなかった。
担当医が
「お母様を助ける事ができず、すみませんでした。お母様の死を無駄にしないよう私達もこれから真摯に患者様と向き合っていきます。娘様もお身体を大切になさって下さい」
お母さん、ごめんね
でもきっとわかってくれるよね。
きっと誰かのためになっている、、、。
鳥かご
昔、小さなペットショップがあって、その店頭にはいつも鳥かごに入れられた九官鳥がいた。
九官鳥はお喋りが上手で
「おはよう」
「おか〜さん」
「いってらっしゃーい」
と通り過ぎる人に声をかけていた。
その九官鳥のお陰かどうかわからないけど、そのペットショップはそこそこ繁盛していた。
最近、その九官鳥が店頭にいない。とうとう売れてしまったのかと残念に思っていた。
1ヶ月後、ペットショップの前を通ると九官鳥がいる。
そして九官鳥が発した言葉は
「カンタ!またフラれた!」
この声を聞いて、大学生ぐらいの男の人が急いで九官鳥の鳥かごを抱えて、
「母さん、こいつを店に出すなって言っただろ〜
こんな家族の内情を話す九官鳥誰が買うんだよ
あ〜わかった、わかった、俺が金払って買うから、店に出すのはやめてくれよな〜」
私は笑いながら、生き物を飼うって大変なんだなぁと思った。