【素足のままで】
何者にも汚されず
まっさらな砂浜を
履いているくつを
投げ棄てて
何もない
素足のままで
何処までも歩いて行けたら
良いのにね
【もう一歩だけ、】
歩いてみよう
疲れ果て
棒切れのような
糞みたいな足
それでも
ここまで来た
だから
もう少し
もう少しだけ
歩いて生きたい
【見知らぬ街】
見知らぬ場所
見知らぬ街
見知らぬ人々
誰も私を知らない
誰も私は知らない
そんな世界に
私は行きたかった
それでも私はここで
生きている
私を知っていて
私も知っている
見慣れた場所
見慣れた街
見慣れた人々
今日も私は
ここで
この日々で
息をしている
【遠雷】
「きゃっ、」
「今のスゴかったな」
暗く曇った空は今にも雨が降り出しそうで
遠くの方で雷鳴が轟(とどろ)いた。
「ねえ、早く帰ろう」
「何?怖いの?」
「…別にそう言う訳じゃないけど」
そう言いながら君はぎゅっと俺の腕を強く握った。
君が雷が嫌いなことは知っている。
それが可愛くてついついからかってしまう。
「わかったよ。早く帰ってアイスでも食べよう」
「うん!」
君は嬉しそうに笑った。
暫(しばら)くして空から雨が降ってきた。
「やっぱり降ってきたね」
「早く帰ってきて正解だったな」
「そうだね」
すると。
今度は近くで雷の音が響いた。
「っ!?」
君はきつく瞳を閉じた。
「大丈夫か?」
俺はそっと君の肩を抱いた。
「大丈夫だって」
「嘘。震えてんじゃん」
「本当大丈夫。ちょっと驚いただけ」
そう言って強がる君は俺の体を押し退ける。
「無理すんなよ」
「別に無理なんか…」
「強情」
「…」
「こういう時くらい素直に俺のこと頼ってよ」
そう言うと再び君を抱き寄せた。
「…かっこつけ」
「実際格好いいだろ?」
「ナルシスト」
「はいはい。なんとでも」
そう言いながらも君はゆっくりと俺の体に体重を乗せていた。
素直じゃない君。
大人じゃない君。
口の悪いところも全部。
「大好きだから」
【Midnight Blue】
あなたの顔も私の顔も
誰が誰かもわからずに
緋 青 黄
色がはためく
目眩(めくるめ)く世界
あなたが踊れば私も回る
くるくるくるくる
誰も彼もが
踊り明かそう
夜が明けるまで
今宵は
あなたも私も
Midnight blueの
密なふたり