【好きになれない、嫌いになれない】
もうやめにしたいのに。
こんな関係いつまでも続くわけない。
だってあなたは私の先生で。
私はあなたの生徒でしかないのだから。
「もう終わりにしよう」
何度目かの別れの言葉。
「どうして?」
「こんなこと…良くないよ」
「今更」
「だけど…」
「ねえ、先生。
この世に悪いことなんて沢山あるんだよ。
なのにどうして私たちのしていることは誰かに責められなくちゃいけないの?」
「それは…」
「答えられないなら、別れる必要ないよね?」
そうだ。
私はただ先生を好きになっただけ。
何も悪いことなんてしてない。
それでも許されないのなら。
この世に綺麗な恋などあるのだろうか?
【夜が明けた。】
帰りたくなかった。
居場所なんて何処にもなかった。
ただいま。
おかえり。
想像しただけで反吐(へど)が出る。
だけど、それが手に入らないからそう強がるしかなくて。
好きでもないのに愛想を振り撒いて。
愛してもないのに体を開いた。
誰でも良かった。
そこに何もなかったとしても。
薄汚く汚れていくんだとしても。
それでよかった。
それが良かった。
生きていたくなくて。
それでも生きなきゃいけなくて。
やりたいことも。
夢もないのに。
小さな事で良かったの。
それがどんなに些細なものでも。
愛して欲しかった。
本当に?
それすらももう分からないよ。
【ふとした瞬間】
君の事を考えている。
電車の移動。
通勤。
通学。
授業。
バイト。
考えているつもりもないのに、気付けば君がそこにはいるのだ。
この気持ちを何と言葉にしよう。
僕は君の事、どう思っているのかな?
そして君は僕の事どう思っているんだろう?
…あっ、ほらまた。
ふとした瞬間、君がそこにいる。
【どんなに離れていても】
どんなに離れていても
この心はいつだって貴方だけのもの。
忘れないよ。
貴方の仕草。
匂い。
声。
全部私の中にある。
どんなに離れていても
私はやっぱり貴方だけが好き。
【「こっちに恋」「愛にきて」】
ピロン!
「あら、珍しい」
そう思いつつスマホ画面を開いた。
「えっ」
"こっちに恋"
「嘘。私に恋してるってこと!?
だったら口にで言ってくれれば良いのに~
もう、照れ屋だな~」
そう思いつつ私は返事を送る。
「"こっちに恋って言うなら、愛にきて"」
ぽち。
「あー、送っちゃった送っちゃった!
もう~どうしよう!」
私は足をバタバタさせて返信を待った。
だけど、いくら待っても返信が来ることはなかった。
「もうーなんなの!なんなの!
恋って送ってきたのはそっちなのに!」
私はスマホをベッドに投げ出した。
「…私は貴方に"恋"してるんだからね」
ピーンポーン。
「ん?」
不意に玄関のインターフォンが鳴った。
「こんな時間に誰~?」
全く非常識だな。
そう思いつつドアの穴を覗き込む。
「…え?」
そこにいたのは。
私は慌ててドアを開けた。
「…よぉ」
「…」
「何だよ?」
「何しに来たのかなと思って」
「何しにって…お前が会いに来いって言ったんだろーが」
「…あんたは"恋"って言ったわね」
「あれは…」
珍しく貴方は動揺している。
「…あのさ、"愛"にきてってどういう意味?」
「それは、」
「…」
「…そ、そのままの意味よ!
それくらい分かりなさいよ!バカ!」
「バカって…」
「なによ…?」
「はぁ…ま、しゃーない」
「は?しゃーないってそれど…ん!?」
貴方が言ったワードに言い返そうとしたけど出来なかった。
言う前に貴方の唇に私の口は塞がれてしまったから。
「…お前に恋してるから、会いに来たんだよ。
そんくらい分かれ、バーカ」
そう言った貴方の顔は思わず吹き出してしまいそうな程、茹でだこみたいに真っ赤に染まっていた。
後々聞けば、こっちにきて欲しいと打ちたかったけど、誤って一番最初に変換されたワードを送ってしまったらしい。
…本当にバカな人。
それでも貴方に恋してる私はもっとバカ…みたいね?