【またね!】16
「…」
帽子「どうしたんだい?」
「名前が、出てこないの…」
三月兎「自分の名前が言えない何てアンタ変わってるな!」
眠り「かわ、っ、…てる…」
「そうよね」
そう言われても仕方がないだって本当に自分の名前が出てこないのだから仕方ない。
帽子「まぁまぁ、レディに対して変わってるは良くない。」
「…」
帽子「元気を出したまえ。そのうち思い出せる時が来るさ、ね?」
「…うん、そうだと良いけど」
帽子「さあ、紅茶でも飲んで、お菓子を食べればそんな気分も晴れやかさ!」
三月兎「ついでに歌って踊ればもっと気分がノリノリになるぜ!」
眠り「の、り…ノ、り…」
「だけど、私これから行くところがあるの」
帽子「おや、それは残念だね。よければ目的地を聞いても良いかな?」
「ええ。白兎を追ってるの」
三月兎「白兎だって!!」
「!?」
三月兎「何でよりにもよってあんな女王の腰巾着なんだ」
「女王?」
三月兎「そうさ、アイツは女王の言いなり。女王の召し使い。下僕。アイツの首を今すぐはねろ!」
「何だか散々な言われようね」
帽子「三月兎は白兎が嫌いなんだ」
「そうなの?」
帽子「理由は不明だけどね」
三月兎「首をはねろ!」
「一体彼が何をしたのかしら?」
眠り「し…ろ…うさぎ、の…いえは、…ずっと…この、さき」
そう言って眠りねずみは頼りない指先を白兎の家があるであろう道に向けた。
「あっちに白兎がいるの?」
眠り「zzz ...」
「あらあら」
寝ちゃった。
私は帽子屋達に別れを告げ、眠りねずみが教えてくれた道を進み始めた。
【春風とともに】
春風と言っても響きだけで実際は可愛いものじゃない気がするのは私だけ?
【涙】
涙を流しても貴方は傍には居てくれない。
理由(わけ)を聞いてくれても私はそれを答えることは出来ない。
貴方が何だか私に冷たい気がしてそれで少し気持ちが寂しさで苦しくなっただけ。
そんな気持ちも捨ててしまえばもう涙は渇れ果てた。
【小さな幸せ】
今日もご飯が美味しい!
【春爛漫】15
「うわぁ…」
そこは現実とも夢とも言えない、何とも絵に描いた…それもちょっとおかしいわね。
言葉では言い表せない世界が目の前には拡がっていたのだ。
目にするもの全て華やかな美しさ。
ここは本当に在って良いものなのか?
そう悩みそうになるくらい現実離れしていた。
見渡す限り花一色。
その中でごちゃごちゃと騒ぎ立ててる一団が。
何とも異様な異彩を放っていた。
チェシャ猫の言った通りそこには私が探し求めた集団が御茶会なるものを開いていた。
メルヘンチックなこの場所で。
しかも男だらけで。
…別に男だけでも良いのだけど。
?「…処で何時まで其処に突っ立ってるつもりだい?麗しいお嬢さん」
「え」
う、麗しい?
生まれて初めて言われたわそんな言葉。
突然沢山の花をあしらったシルクハットの紳士風の青年が話しかけてきた。
?「てか、呼ばれてもいないのにここに居るって無作法にも程があるよね?」
?「ぶ…さほう…zzz」
無作法ですって?
次に御世辞にも紳士とは呼べない、頭から垂れたミルクティー色の兎耳を生やしたホスト風の青年が私を値踏みするように上から下まで見るとにたにたと嫌な笑みを浮かべた。それから少し小柄なこれまた頭からねずみの耳を生やした少年がテーブルに突っ伏しながら眠そうに呟いた。
「それなら、男性が女性に気安く声をかけてくるのは無作法にはならないのかしら?」
ムッとしたのでつい言い返してしまった。私の悪い癖だ。
?「おや、それは失礼したね。私はイカレ帽子屋、この御茶会の主催者さ」
?「俺は三月兎!毎日がお祭り騒ぎだ!」
?「寝、む、り…ねずみ…zzz 」
帽子「さぁ、こちらの自己紹介は終わったよ。君の名前も教えてくれないか?」
「そうね…」
ちょっと釈然としなかったけど一応名乗られたのだし私も自己紹介しなくちゃ。
そう思ったのだが。
「私の名前は…」
…やはり、自分の名前を言おうとすると頭の中に白い靄(もや)がかかって言葉にならなかった。