40. 光と闇の狭間で
その店に定休日はない。開けない日は「今日はお休みします」とマジックで書かれた紙っぺら一枚が貼られる。行ってみるまでのお楽しみ。今のところは2勝3敗。と言っても2連敗中である。
今晩こそはと店を目指して歩くと、やっと兄さんの姿を見れた。連敗は2でストップ。挫けずに来た甲斐があった。閉まっているのではないかと一見不安になる仄暗いキッチンも何だか貴重な光景に見えてくるから不思議だ。
注文を済ませて兄さんには天井が低そうなキッチンを一通り見渡すとやはり視線は一処に集まる。ジリジリと焼ける光と暗い厨房を行ったり来たり回り続ける姿は実に食欲を唆る。こっちは鶏肉、こっちは豚肉だろう。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
「ありがとうございました」
手には待ちに待ったケバブ弁当、浮かれながら駅へ急いだ。
39. 距離
対話するには生身で互いに手の届く距離にいることが大事だと言う人がいる。話すことだけではなくてその人の体の動きや力みからも受け取れるものがあると。生身で向き合えないために相手をつい傷つけてしまうからリモートだと少し怖いとも。
一方でリモートでも出来る、その方が安心するという人もいる。更に対面だとアクセスできない人もリモートでは参加できるという面もあり、出会う価値観の幅は広まるだろう。
自分は対面派とリモート派のどちらもわかる気がする。心身を向き合わせることはそのリアリティから攻撃しづらくなる。画面の向こうと文字情報だけをやり取りするならばより属性や人格から離れて思いのままに考えやすい。
きっと両方に慣れてそれぞれの感覚を覚えることで色々な状況で人と向き合えるようになるのだと思う。
38. 泣かないで
ずっと泣かないでいても、目を逸らしていた感情が積もり積もって日々どうしようもなく苦しくなってしまう。
だから、その場で泣けなくてもその日のうちに泣いていた。枕は冷たいものだと思っていた。
毎晩泣くのが当たり前になっていたからその異常性に気づけなかった。むしろまだ涙が出ることに安心していた。
逃げるチャンスがあれば直ぐに逃げるべきなのだと気づいたのはそこから脱した後のことだった。
泣かないでとは言わないけど、泣くしかない毎日なら見直したほうが良い。
この言葉を未来で辛くなったときの自分に託す。
37. 冬のはじまり
冬に気づくときあるある〜パチパチパチパチ
・影、長ってなる
・真昼も横から陽射し
・朝の布団が憎い
・ズボン履くとき寒い
・みかんが輝いて見える
36. 終わらせないで
好きな小説家がいた。いや、今もきっといる。その人はカクヨムにて投稿していたが、ある時投稿を止めた。Twitterのアカウントも消えた。小説を辞める訳ではないが、世には出さないと言っていた。
今も生きているといいな、楽しく書いているといいな、なんて一方的な我儘だからあの人はいい気分にならないだろうけど。この我儘をずっと続けてしまおう。