初恋の日
「島崎藤村?」
「そう。まだあげ初めし前髪の……って、知らない?」
「あー、何となく聞いたことあるかも。見せて」
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
「ははーん。初恋は実らないの典型だね」
「なんでそうなる?幼さも感じられる素敵な両思いの初恋でしょーよ」
「えっ、これが両思いに読めるの」
「逆にどうしたら読めないの」
「……ほんとに合わないなぁ」
「合わないねえ」
明日世界がなくなるとしたら、
明日世界が無くなりますようにって願う労力が省けるわ。
大地に寝転び雲が流れる……浮かんできたのは、
余計な場面設定やら創作環境指定しないで淡々とお題を出してくれるアプリのお話。
「たーてーぷ?」
「……うぅ、」
「たーてーぷ?」
「おーい、姪っ子が心配してんだから反応しろ〜」
「だからじゃん!2歳児に心配されてるのが情けなくて泣いてんのっ」
「たいのたいのけー」
「ん?」
「たいの、たいの、けー!」
「痛いの痛いの飛んでけだって」
「ぅぁあ……幼児のやさしさが五臓六腑に染み渡るぅ」
「ほら心配してくれてありがとうは〜?」
「ありがと〜。もう大丈夫だよ〜」
「あーい!」
「はーい。………姉ちゃんさぁ、姪っ子にオバチャンに優しくしたら溶けちゃうからやめなって言ってもらえたりとか」
「は?」
「ナンデモナイデース」
#優しくしないで
「そう見えるの?」
「ん?」
ん?とは反応しつつ、姪っ子はクレヨンを画用紙にグリグリ押し付け続ける。
描いているのは、恐らく太陽。
黄色、ピンク、赤、緑……その他色々の花たちに、本人とお姉ちゃん、義兄さん、そんで多分このメガネが私。
その上で燦然と輝く、紫色の太陽。
「紫、好き?」
「んーん!」
力強い否定。
「そしたら、なんで紫なん?」
「まだつかってないから!」
「……ああ」
赤も黄色もオレンジも、もう花で塗っちゃったもんね。
「これでぜんぶ!」
「クレヨンコンプリートかぁ。おめでとう」
「あいあと!」
姪っ子は常に全力で生きているのだ。とても偉い。世界一偉い。
#カラフル