「いいよ、付き合おっか」
高校に入学して18回目の告白に、初めてオーケーした。
「どういう心境の変化で」
「んん?んー、予感?」
愛らしい髪型とお化粧、恥じらう仕草、赤い頬、告白の言葉。
「なになに運命感じちゃった?」
「そうだねー、運命かも。うん、きっとそう」
攻撃されることが分かっててもやめない、強い自我。
絶対に自分は負けないっていう、隠せない自尊心。
自分に相応しいかどうかだけの、価値基準。
「明日から楽しみだなぁ」
「もうノロケかよ。うらやま〜」
「ふふ、いいでしょ〜」
きっとキミはボクの、
#特別な存在
「おう、死んだか」
痛い。
喉が痛い。
頬が痛い。
腹が痛い。
脚が痛い。
腕が痛い。
「死んだかー?」
触んなボケ。
毎度確認するくらいなら殺せや。
「…………しねくそ」
「あんだよ、生きてんのか」
触んな触んな触んな気持ち悪い。
お前が触ったとこぜんぶ汚れるんじゃ。
「生きてりゃいいや。捕まりたくねえし」
触んな。
「死んだ方が楽だよなあ、オレもお前も」
バカくせ。
#バカみたい
ひとりぼっち同士が寄り添えば、寂しくないと思った。
ひとりぼっち同士が寄り添えば、怖くないと思った。
ひとりぼっち同士が寄り添えば、痛くないと思った。
ぜんぶ、勘違い。
ひとりぼっちじゃなくなったから、寂しくて。
ひとりぼっちじゃなくなったから、怖くて。
ひとりぼっちじゃなくなったから、ずっと痛い、ずっと苦しい。
ぜんぶ、嘘だ。
僕はもう、寂しくない。
僕はもう、怖くない。
僕はもう、痛いけど、苦しいけど、辛くない。
願わくば、君も同じ矛盾を抱えて、そこで息を止めていてほしい。
「二人ぼっち」
「今、なんて言ったの」
「…………別れよう」
出会いはごく単純なものだった。
燻った塊同士の、乱癡気騒ぎ。
青い顔をして隅っこで縮こまった仔犬を、可愛いと思った。
酔わないから辛いんだよと差し出した、甘口の、楽園を冠するカクテル。一気に飲み干して、噎せていた。
今同じ場所で。
もうあなたの顔は青くない。
ああ、そうか。
あなたはもう、目が覚めてしまったのね。
「じゃあね。……風邪、引かないで」
中途半端で、その場限りのやさしさを求めていたのはあなただけじゃなかった。
伝えたことは、無かったけど。
あの日差し出した楽園が、今はこの手の中。
朝が来るまでは、どうかまだ。
「夢が醒める前に」
嗚呼、君、これが恋といふものだ!
これまでのぼくは死に体だったに違いない!
今ぼくは生まれ落ちた!
君、君という雷鳴が堕ちた先がこんなにも矮小な人間であったことを心から憂いているけれど、嗚呼、君、それ以上の悦びだ!
案ずることはない、ぼくがすべてうまくやろう。
泣くことはない、ぼくがぜんぶかくしてあげる。
だから君、ずうっと傍にいておくれ。
#胸が高鳴る