「今、なんて言ったの」
「…………別れよう」
出会いはごく単純なものだった。
燻った塊同士の、乱癡気騒ぎ。
青い顔をして隅っこで縮こまった仔犬を、可愛いと思った。
酔わないから辛いんだよと差し出した、甘口の、楽園を冠するカクテル。一気に飲み干して、噎せていた。
今同じ場所で。
もうあなたの顔は青くない。
ああ、そうか。
あなたはもう、目が覚めてしまったのね。
「じゃあね。……風邪、引かないで」
中途半端で、その場限りのやさしさを求めていたのはあなただけじゃなかった。
伝えたことは、無かったけど。
あの日差し出した楽園が、今はこの手の中。
朝が来るまでは、どうかまだ。
「夢が醒める前に」
3/20/2023, 12:56:28 PM