【特別な存在】
「夢がほしい」
「そう」
「冷たいね」
「夢ってなんだろ」
「うーん」
「興味ないなあ」
「夢ってさ」
自然と生まれるものじゃない?
彼女は言った
あれから数年後
桜の木の下で彼女の言葉を思い出した
夢を持たないあの子は難関校に進学し
今何をしているかは分からないけど
自然と私には夢が生まれていた
「彼女に自慢できるくらい夢を叶えよう」
特別すぎるくらい彼女は別格だった
好きじゃ収まらない気持ち
高校生活の最後にあんな話ができて良かった
特別な存在は今、何をしてるんだろう
【寒さが身に染みて】
時計を見ると22時を回っていた
しかも真冬
手の先が赤くなっているのが見なくてもわかる
『ただいま〜!』
ガチャ
扉を開くと猫のむーちゃんが歩いてくる
こいつは呑気だな
そう思いながら靴を脱ぐ
外は寒いけど
家に入れば暖房は付いてなくとも暖かかった
【20歳】
『じゃあ…四番で』
今日は俺の誕生日だ
祝ってくれるのはLINEだけだが
せっかくならとコンビニに行き
タバコ、酒を買いまくる
ついでにおつまみになるようなお菓子も
「年齢確認をお願いします」
『はい』
俺は迷いなくボタンを押した
なんせ、たった今
1度しかない素晴らしい誕生日を迎えたのだから
【三日月】
仕事帰り
ふと空を見上げると月が雲に隠れていた
せっかく綺麗なのに勿体ない
そう思ったが人間もそうなのかもしれない
見つかるのが怖くて自分を隠す
それは傍から見ればすごく美しいのに
『…見えた』
それは満月とは程遠い三日月
だけどそれもいいのかもしれない
欠けている部分があるからこそ人は輝く
たまには写真でも撮って帰ろうか
【色とりどり】
これは何色かな?
あかいろ!
そうだね、じゃあこれは?
みどり!
そうだね!
ねえ、色鬼しよ!
いいよ!
『…夢』
5:30、目覚めた
私はしがないサラリーマンだ
なんて懐かしい夢を見たんだ
あの頃に戻りたい
もう
私は今黒一色だけだ