明日世界が終わるなら、いつも通り過ごしたいなんて思ったが、多分無理だ。
世界が終わるという事実を受け入れられずに、何となくその日を終わるだろう。
あくまで理想で妄想の話をしよう。
二つほどある。
まず、外に出かける。最後の世界の空気を吸いながら、散歩をしたい。
真っ暗な田舎の雰囲気を堪能しながら、自分の好きな音楽を聴く。
自分の想いに耽るのだ。
まずは過去を思い出すだろう。
人生の道を踏み外してしまったな、なんて思いながら溜息をつく。
次は未来を思うだろう。
世界が続いていたら、この世で一番大切にしたい人を、作れていただろうか。
多分、最終的に思うのは、今考えても仕方がない。どうせ終わってしまうから、と。
人には、会わないようにするし、連絡もしない。
ただ、一人で世界を堪能したい。
最後は、ブランコに乗って紅茶花伝を飲みながら、この世に対して不満を言いまくる。
私が幸せに生きれなかった責任を取って、世界は続いて欲しい、なんて言いながら世界は終わるだろう。
もうひとつは、明日世界が終わるという事実に絶望している人間達をじっくり観ていたい。
明日世界が終わるなら
耳を澄ますと、何者かの声が聴こえてくる。
『何故世界はあるのか』
『何故人間は生きるのか』
『何故人は自殺するのか』
『何故人間は死ぬのか』
そんな事をまた何者かが答えを返す。
『そんな事考えたって君に利益は無い』
『死ぬ為に生まれてきたんだろう』
『地獄から逃げたいだけだろう、地獄に堕ちるだけなのに』
『たまたま、産まれてきたから』
そんな答に私は、納得をし、イヤホンで耳を塞ぐ。
耳を澄ますと
夜、寝る前に、妹ととある話をする。
時には、妹の相談。
時には、親の愚痴。
時には、遊ぶ約束。
色んな話をする。
真っ暗な中で、ひそひそ話が繰り広げられる。
親の足音がしたら、二人一気に布団に潜って、寝たフリをする。
バレているんだろうなと私は思うが、小さい頃から寝たフリをするのが、染み付いている。
足音が止んだら、またひそひそ話が始まる。
ある程度、済んだら「おやすみ」と言って、二人は目を瞑る。
私は、妹にしか話さない話が多い。妹もまた、私にしか話さない話ばかり。
この時間だけは──
二人だけの秘密
人間は裏切るものだと分かったのは、三度目に裏切られた時だ。
一つ目は、遊ぶ約束をしていたのに別の友達と遊んでいた時。
二つ目は、仲良かった友達同士が、私を置いて二人きりで遊び出した時。
三つ目は、手紙を交換し合うほどの相手だったのに、いつしか『死ね』と書かれる程の相手になった時。
どの人間も許そうなんて思わない。来世まで呪ってやりたい。
人間は、裏切る。
だからこそ、優しくしてくれる君が信じれないんだ。
優しくしないで──
暗い部屋の中、手に持っている液晶の中にシャープな輪郭に、ぱっちり二重の目、整った高い鼻の少年が、楽しそうにお話している。
時々、真っ暗になる時、自分の顔がうっすらと映る。
丸い輪郭に、一重の目、潰れた鼻。
比べる値までにいかないほどの、ブスさ。
楽園だったのに、地獄になった。
楽園