耳を澄ますと、何者かの声が聴こえてくる。
『何故世界はあるのか』
『何故人間は生きるのか』
『何故人は自殺するのか』
『何故人間は死ぬのか』
そんな事をまた何者かが答えを返す。
『そんな事考えたって君に利益は無い』
『死ぬ為に生まれてきたんだろう』
『地獄から逃げたいだけだろう、地獄に堕ちるだけなのに』
『たまたま、産まれてきたから』
そんな答に私は、納得をし、イヤホンで耳を塞ぐ。
耳を澄ますと
夜、寝る前に、妹ととある話をする。
時には、妹の相談。
時には、親の愚痴。
時には、遊ぶ約束。
色んな話をする。
真っ暗な中で、ひそひそ話が繰り広げられる。
親の足音がしたら、二人一気に布団に潜って、寝たフリをする。
バレているんだろうなと私は思うが、小さい頃から寝たフリをするのが、染み付いている。
足音が止んだら、またひそひそ話が始まる。
ある程度、済んだら「おやすみ」と言って、二人は目を瞑る。
私は、妹にしか話さない話が多い。妹もまた、私にしか話さない話ばかり。
この時間だけは──
二人だけの秘密
人間は裏切るものだと分かったのは、三度目に裏切られた時だ。
一つ目は、遊ぶ約束をしていたのに別の友達と遊んでいた時。
二つ目は、仲良かった友達同士が、私を置いて二人きりで遊び出した時。
三つ目は、手紙を交換し合うほどの相手だったのに、いつしか『死ね』と書かれる程の相手になった時。
どの人間も許そうなんて思わない。来世まで呪ってやりたい。
人間は、裏切る。
だからこそ、優しくしてくれる君が信じれないんだ。
優しくしないで──
暗い部屋の中、手に持っている液晶の中にシャープな輪郭に、ぱっちり二重の目、整った高い鼻の少年が、楽しそうにお話している。
時々、真っ暗になる時、自分の顔がうっすらと映る。
丸い輪郭に、一重の目、潰れた鼻。
比べる値までにいかないほどの、ブスさ。
楽園だったのに、地獄になった。
楽園
『頭が良くなりたいな』
本を読む私の膝の上で、愛猫はすーすーと寝息を立てる。
澄み渡る空は、太陽と共に世界を明るく包む。
洗濯物が、風の流れに身を任せている。
風が止み、愛猫は目を開ける。何かを思い出したかのように、私の膝から降りて、日向ぼっこを始める。
雲ひとつない空は、太陽がよく愛猫を照らしてくれる。
読んでいた本を閉じ、昼ご飯の準備を始める。
「周りに流されない、偉い」
テストの点数を見ている私に、一人の先生が言う。他の生徒達は、お互いの点数を見せ合い、競り合っている。
私の点数は、他の人より良かった。自慢出来るほどの点数だった。
窓からの光は、見せ合っている生徒達を照らす。
私は、先生の言葉に身を任せている。
私は洗脳から解けた。ただ、自分の好きなように勉強したいだけなのに、先生によってプレッシャーを押し付けられる。
雲で覆われた空は、私の心を再現しているようだった。
閉じていた本を開き、勉強の準備を始める。
風に乗って