ミミッキュ

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7/20/2023, 2:01:15 PM

"私の名前"

6文字中5文字の母音が"A"で、かつ名字が"花家"だから小さい頃に何回か「女の子みたいな名前」って言われて、それ以来──中学に上がったくらいの頃からあまり言われなくなったが──自分の名前が軽くコンプレックスだった。
名前は"大我"と男の子によく付けられるような名前なのに──最近では女の子にも"たいが"と名前が付けられることもあるとかないとか──と心の中で講義したり。
けどまぁ、両親が付けてくれた大切な名前だし、気に入ってはいるけど…。そうなんだけど、やっぱちょっと複雑で、ハッキリと"気に入ってる"とは言えない訳で…。

けど、なんの脈絡もなく急に──渡した書類を確認しながらだったから恐らく俺の署名を見て──
「お前の名前、良いな。」
なんて言われて。思わず、
「はぁ?」
って──急だったので驚いて思わず──我ながら怪訝で不機嫌そうな声色で聞き返したけど、
「綺麗で柔らかな、素敵な名前だと言っている。」
そう言われて、恥ずかしさと嬉しさが込み上げてきた。
勿論、両親が付けてくれた名前を褒められたのは嬉しいけど、それだけじゃなくて。
それまで、幼い頃に「女の子みたいな名前」と言われてコンプレックスだった名前を、"良い名前だ"と言われて。もういい歳した大人だっていうのに、自分より年下の彼に、"素敵な名前だ"と言われて、なんだか心がとても晴れやかで、じんわり暖かくなって、思わず目を閉じて言葉を反芻して喜びに浸っていた。
それからというもの、あの時言われた言葉を一言一句間違わず記憶していて、毎朝あの言葉を反芻して"自分の名前は胸を張って誇れる素敵な名前なんだ"と言い聞かせて、あの時感じた嬉しさと喜びをもう一度感じて1日をスタートさせるのが毎日のルーティンになった。

7/19/2023, 2:40:09 PM

"視線の先には"

ふと隣を見ると、彼の横顔が目に入った。
その横顔は、儚くて切なく痛々しく感じる。だが同時にどこか優しく微笑み見守るような、暖かさも感じた。夕焼けを吸い込み、キラキラと瞬く目はまるで宝石のようで美しかった。
「…。」
一体どのくらいたっただろうか、その横顔から目が離せなくなり、しばらく見蕩れていた。
やがてこちらの視線に気づいて、恥ずかしそうに目を細めながらこっちを向いた。
「…なんだよ。」
「いや、別に…何でもない。」
「そうかよ。」
「…美しいな。」
「そうだな。」
そう言って彼はまた夕焼けに視線を向けた