ぺんぎん

Open App
1/11/2024, 3:09:38 PM

あたりいちめんでごうごう風ががあばれていた。つめたく差す西日はこくりと傾いてアスファルトにとけ、いよいよ向こうの空は、黒い化け物のようなわた雲にたべられはじめていた。いちどに息を吸い込むと、胸につららが降ったような痛みがはしった。

12/29/2023, 9:40:49 AM

朝ごはんのクラムチャウダーが、冷えて、あたためてまた冷えて、そのたった半日すこしが人生はんぶんくらい長かった。会えても会えなくても痛くて恋はなによりも重くつきまとうのだった。

12/22/2023, 12:59:47 PM

手ぶくろはめて、指ふにゃふにゃ、ってきみがわらって、たしかにお腹のなかがグラタンみたいなぬくもりでいっぱいになった、それくらいしあわせだった

12/20/2023, 8:12:46 AM

走り出したとき、もっともさびしかったのは、だれか追いかけてくれるひとがいるかもしれないと一瞬、ねがうように思ったことだった。吐く息がしろく存在し続けるようにその望みは胸に染み付いた。とろとろと街の灯がわたしの目に溶けだした。わたし以外のなにもかもがきらきらとひかっていた。

12/3/2023, 1:54:37 PM

きみが残していったもの。ほんのひととき、きみがわたしの心を渡り歩いたように、これからもきみはのびのびとだれかの心に足跡をつけていくのか。そのことひとつにひどく打ちひしがれて、わたしはいま、となりのいない信号機をひとりで待てるだろうか?

Next