君の音が煩いくらいに蝉と交わりあう
もう治まらない鼓動の在処を這いずるように抑えつけるように
端整な顔立ちがくにゃりと崩れていく
私ごときにすがりついたまま身動きが取れずに甘い甘い罪に侵されている
ぞくぞくと身体中沸き立った熱で溢れだした
膿んだ傷を優しい針で痛め付けるように頬をゆるりと撫で上げた
ああ惨めでいとおしい君の恍惚そうな双眸に
見に覚えのない優越感にゆっくりと脳を侵食されていく
君のすりがらすの眼にうっすら恋をしたようだ
ありのままの、純粋な愛に焦がれる
回らない頭にこびりついた君の色、形、匂い、音、いいや、それどころかそれ以上
とろけるような甘さが心臓を膜のように覆っているよう
後になって追ってくる熱を誤魔化す素振りをしてしゃがみこむ
くしゃくしゃと皺の寄ったTシャツ
もう二度と離せなくなるような愛で酔わせてみせて
まろい頬に黒子のある指を這わせた君は
病みつきになってしまうほどの甘い毒を吐き出した耽美なくらげのよう
爆弾を仕掛けた君と、わざと引っ掛かった馬鹿野郎のちんけな騙し合い
どくどく音を奮わせていますぐにでも爆発してしまいそうな鼓動ごと
浮き立った気持ちごと簡単にとろけそうで
抱えきれそうにない愛をぐらり不安定なまま飲み干して
脳天までどっと弾け飛んでゆっくり侵されてゆく最高の心地
うっとりとした笑いを浮かべ、既に気の狂ったような君は世界一愛しい爆弾魔
今なら、心臓の色形が分かる気がする
鼓動の音が、全身へと溢れだす
とろりと鼓膜が溶けそうなほど甘い音がぬるい雨とまじわった
ひとかけらも残らなかった愛など、簡単に憎んだまま棄てて
じくじくと膿む傷跡なんていっそのこと喰い荒らしてしまえ
ちりちりと夜の音と溶け合った色は
身を焦がしめらめらと燃え上がっている
ぼんやりと熱を帯びた瞳は街の色をそのまま掬いとったかのようだ
僅かに藍を彩る灯がちらついて滲む
息を潜めたベッドルームの上
鮮やかで愛しい夜を明かす