Rapi

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9/18/2023, 11:11:35 AM

ひとつめの扉は天国へ
ふたつめの扉は地獄の恋人のもとへ
みっつめのドアは君の生きるべき世界に戻れるよ


うつくしい人だった。
私が霞んでしまうくらいに。
容姿もさながら、
その心は赤子の様に純真で、清らかだった。
彼の前では妬みなど何処かへ行ってしまった。

そんな彼が、死んだ。

地獄の悪魔が、拐かしていったらしい

わたしを止めるモノは、無くなった。


勢いできたこの世界は、光に包まれて酷く美しかった。

それでも此処は天国ではないという。

自称案内人は、ひどい三つの選択肢を突きつけてくる。

やっぱり天国ではないのかもしれない。


天国へ行くには何も得ていなさすぎる。まだ早い。


では、地獄へ行けるのか?

勿論と言いかけて、ふと心を占める感情に気づく。

ワタシはずっと、彼が、兄が憎かった。

片割れのくせして、全てを奪っていった兄。

優しい心も絶世の容姿も、少しくらいくれてもよかったのに。


気づいたら、三つ目のドアに向かって足が動いていた。

二つ目に行こうと思うのに、足が痺れて動かなくなる。

珍しいブリキのドアノブを捻る感触が、妙に手に残った


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「ちょっと!何処いってたの!?」

「あ...」

気づいた時、私はマンションの前に突っ立っていた。

瞳からは涙が溢れているのに、直前のことがどうも思いだせなかった。

でも、これだけは聞いておかないと。

「あのさ、私って一人っ子だよね。」

当たり前との返答を得て、何故か酷く安堵した。

歩きだした私に、夜景の光がしみる。

(この中に、彼もいたのかな。)

もう思い出せないけれど



【夜景】

9/17/2023, 10:36:14 AM

「君には一生手折れないくらいの物を、
誕生日に贈ってあげる」

そう言って例の小間使いが姿を消したのが6日前。
誕生日まであと6日。

屋敷のメイドが駆け落ちして、姿をくらませたのが3日前
誕生日まであと3日。

誕生日プレゼントを売りに来るはずの商人が来なかったのが昨日のこと。
期限はもう、明日まで。

早朝、カナリアが鳴き出す前に彼は窓から戻ってきた。

そしてみたのは...

大きな大きな花畑。

幾ら摘んでもなくならないほどの花。

ああ、なんて幸せなんでしょう。

「これで一緒にいられるね。」

ずっと想っていた小間使いは、心底嬉しそうに笑った。


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昔々、あるお屋敷に美しい少女が住んでいました。

その少女に会いに、沢山の人が屋敷を訪れましたが、
帰ってきた人はごく僅か。

その人々は口を揃えて言います。

「あの屋敷は、悪魔が棲みついている」

うつくしい少女は人の心を折るのが大好きで、そばに控える婚約者はそんな少女の性格を作った張本人。

ずっと自分だけをみて欲しいから、人が寄り付かない性格をつくり、愛でているのだとか。

屋敷には婚約者に恋慕し、少女を殺そうとしたカナリアというメイドが、毎朝拷問を受けているのだとか。

でも一番怖いのは、大きな大きな花畑が、庭につくられていることなのです。

婚約者の心を折らないためにつくられた花畑は、かって痩せ細っていた土地につくられました。

そしてその直前、多くの人が姿を消しました。

ああ、もうこの話はやめにしましょう。

少女と悪魔は、それでも幸せに暮らしているのですから


【花畑】

9/17/2023, 5:50:23 AM

常識を生きている。
みんなが思い浮かべるような、常識を。
会話も、行動も、常識を。
それを毎日繰り返す。
そうやって生きてきた。
だから、今日も

『常識の1日』

のはずなのに。
常識から外れそうな心は涙のひとつさえこぼさなくて。
ああ、でも

空は泣いている。


【空が泣く】