#ずっとこのまま
青々とした木々が、音をたて夜風に揺れる
何処からか、ホーッとフクロウの声も聞こえる
「...今宵は、月が綺麗だな」
男が、問いかける
言うように、空には満月が浮かんでいる
「...いや、今宵”も“か」
自傷的に笑いながら、
男は空から視線を移す
「まぁ我にとっては、それが当たり前だったのだが」
まるで愛おしいと言うように
男は、視線の先の彼女を撫でる
「文字通り、お前が毎日のように言いに来るからな」
顔色一つ変わらぬ彼女を見たあとに
男は顔をふと、伏せる
「お陰で毎日眺める癖ができてしまった」
全く困ったものだ
...と、形だけの溜息混じりを。
「......だが、やはりお前からの言葉も聞きたいものだな」
男は彼女から手を離し
代わりに、サイドテーブルに手を伸ばす
「我だけが一方的に言うなんて、不公平だろう」
彼女は、何も言わない
男はそれに眉を顰め、今度こそ溜息を零す
「...まぁ、良い。目を覚ました時には、嫌になるほど聞かせてくれるのだろう?」
男は、彼女の手を握る
丁寧に、割れ物を扱うように
「その為にこの我、我が直々にそちらへ行ってやるんだ」
手を握るのは逆の手で
男は先程手にした物を力ずよく握る
「...ついでに、もう時間も残っていなかったからな。精々我に感謝するがいい」
もう一度、男が満月を見る
「...では、行くぞ―――
再び赤き月の下で、ユカイに踊ろうぞ」
そうして男は、自身の胸に刃物を突き刺した。
これは、もしもの話である
何処かの二人の
不可能に近い可能性を考えた作者の、妄言である
その後の解釈は、皆様次第である
言うまでもないとは思いますが、原作とは無関係である
#20歳
もう戻れないんだと思って
進むしかないのだと思って
実感が湧くような
湧かないような
そんな、心の狭間
子供の終わりで
大人の初まり
...その時、私は何を思うだろう
その頃には、大人へのイメージも固まってたりするのかな
その先も生きていける様な、何かを見つけられるのかな
それとも、今と殆ど変わらないのだろうか
心が、身体に置いていかれてしまうのだろうか
20歳にならないと分からないのに
私は偶に、そんな事を考えるようになった
...これは、成長してるのかな?
#三日月
良くも悪くもない、中途半端な未完成品
満ちる事も見えなくなる事もなく
かと言って、名は知られている、そんなもの
でも、私は別にそれでも良いと思う
見えなければ、知られていなければ、意味は無い
だが完全なモノは、時に眩しすぎる
...そう言う意味ならば、未完成も良いと思わないか?
だから私は、三日月が好きだ
眩しさと暗さの狭間を、暖かく照らしてくれる三日月が
#色とりどり
君と居ると、世界が輝いて見えるんだ
...比喩なんかじゃないし、冗談でもないよ
今までは、ただ通学するだけの憂鬱な時間だったのに
今じゃ、君と直接話せる幸せな時間になった
少しの興味もなかった本も
君との話題作りで読んだら、意外に楽しいと気が付けた
...ほら、嘘じゃないでしょう?
他にも、数えきれないくらいあるのだけれど
君が僕に、新しい景色を見せてくれてるんだよ
幸せな、色とりどりの景色をね
だから、これからも一緒にいてくれたら嬉しいな
#雪
一面の銀景色
太陽の光を受けたそれは
宝石の様に輝いている
誰かが通り過ぎたのだろう
それの上には
足跡がクッキリと浮かんでいる
それが、なんだか少しだけ特別に見えた
...寒いのは、苦手だ
出来るなら暖かい所に籠っていたいと思う
しかし、私にとって
この雪景色は
巡る季節で一番特別で、好きな景色だ