「ごめんね、僕…君とは一緒に行けないんだ」
「…え?な…んで…?」
逃げ出している最中突然兄弟がそんなことを言い始めた
忙しなく警報が鳴り響く山奥のいかにも怪しい研究所、ここではクローン技術や人造人間の研究所が行われている
「ねぇっなんでなの?一緒に逃げようって!ここまで来たのに…!」
「…ごめん…もう僕には………君だけでも逃げて」
「そんな…なんでっじゃあなんで僕には付いてないのっ?」
僕とその前2つの兄弟は近い時期に作られた
もちろん見た目は瓜二つどころか違いを探す方が難しい
ただ、1つ前の兄は生きているのか死んでいるのかすら分からない
一緒に逃げようと言い出した2つ前の兄
残っている中で1番年の近い兄が僕に発した衝撃的な言葉、それは
「僕にはもう、処理のための爆弾が取り付けられている」
兄が言うには起動されてから1週間、脳内プログラムの年齢的に違和感を覚え始める頃に反乱防止のため爆弾が付けられるらしい
それでオリジナルを殺されたらたまらないからだそうだ
生憎、製造日は近くても
僕が起動されたのはちょうど1週間
そう兄が今日逃げ出そうと言ったのは僕を守るため
今日爆弾が取り付けられる予定の僕を
奴らから守るため
嫌な警報音が頭に響く
奥で他の兄弟が焼かれているのだろうかあの嫌な臭いが鼻を刺す
あぁなんで感情があるのだろうか
感情なんかなくたっていいのに
「ごめんね、最期にお兄ちゃんって呼んで?」
「っ、ごめんねっお兄ちゃんっ」
「…ありがとう、きっと幸せに暮らすんだよ?」
どうする事も出来なかった僕は泣きながら走り出し力尽きていたところをおじさんに救われた
そんな僕は今、警察をしている
「ねぇ、お兄ちゃん必ず仇はとるから、きっと遅くなっちゃうかも…ごめんね」
「もうごめんねはいらないよ…ありがとう」
そう同じ声が聞こえた気がした
ふと目が覚める
隣には規則的な寝息をたてている彼が気持ちよさそうに眠っていた
起こさないようにゆっくりと布団から抜け出しベランダに出る
ほんのりと雲がかっている空に月が輝いている
綺麗な輝きに目を奪われながら
彼がこの先も幸せでありますように
願わくばその隣には自分が並んでいられますように
そう願う
月に願いを
(あれ…この匂い…)
大好きだったあの人がつけてた香水の匂いがした。
ハッと振り返る。
数年前突然消えてしまったあの人の匂い。
大好きで安心して落ち着くあの匂い。
振り返るとそこにはいなくなったあの人が手を広げて待っていた。
言葉はいらない、ただそばにいて欲しい
とは言ったけれどやっぱり言葉だって欲しい
あわよくばあなたの全てが欲しい
そんなのわがままだってわかってる
でも
言葉はいらなくてただそばにいて欲しい時も
ちゃんと言葉で言って欲しい時も
言葉で書いて欲しい時も
ずっとずっとあなたを愛していたい
そばにいたい
愛して欲しい
そばにいて欲しい
これはそんなわがままな僕の独り言
「言葉はいらない、ただ・・・」
あーあ
また失敗しちゃった
もう何もしたくないな
だってずっと失敗ばっかなんだもん
私の大切なあの子はそういった
私はこう言った
「今日の日にサヨナラしてまた明日から頑張ろ」
って自分では思ったことも無いくせに
あの子はありかどうとそう言って帰って行った
「今日の日でさようなら」
そう言って私は
屋上から飛び降りた