私の願いは、私と神様だけが知っている。それはどういうことかと、星空を見ながら、時折に友だちの思い出をまぜながら、そして、七夕の日でしか叶えられないこと、山に登りながら町の明かりを遠目にし語る。私はカササギ、私の願いは、橋を作り織姫と彦星を会わせることなのだ。
赤い糸かぁ、窓越しに見えるのは友達と一緒に賑やかにしている君、これが君と繋がっていたら面白いのに、人生はそうも簡単にはいかない。日差しがスポットライトのように、私を照らしてるのに君はちっとも此方に気づきもしない。なにか、君が通るこの道の先に、私がいないと困る様なRPGみたいなイベントが起きないだろうか。
縁側で、何を話したらよいのかどぎまぎして迷っていると、彼女が口を開く。また、会えたのは嬉しいが、私はこの様に病気持ちになってしまった。来年は、もう会えないかもしれない、とのことだった。旅人は、彼女の手を優しく握り、ならば、私と共に暮らさないか、君と会えなかったこの1年が、とても辛かったのだ、と告白をする。彼女は、ありがとう、と涙を流しながら返事をする。入道雲が広がるこの夏に、風に揺れる花は大好きな太陽を、見つけれたのだった。
私の心は変わらなかったのに、彼女は何処に行ってしまったのか。会えるとは、宿に来させるためだけの策略だったのだろうか、心がモヤモヤとした。帰る前に、思いきって宿の者に彼女の事を聞くと、彼女は病気になってしまったとのことだった。案内されて裏の座敷に行くと、縁側の柱に寄りかかり目を瞑る君がいた。夏の風物詩の風鈴が、呼び鈴のようになると、閉じていた目が私を捉えた。すると花は、あの時のように、いらっしゃいと微笑んだのであった。そして、その姿はなんとも妖美で、私の心を再び捕らえたのだった。
旅人はとある宿の玄関にある花に、一目惚れをした。太陽の光を浴びて微笑む姿は、私の旅の疲れを一瞬で消し去ったのだ。君と最後に会った日に、名残惜しくて君の事をもっと知りたいと打ち明けると、来年もまたいらしてください、その心がお変わりにならなければきっと会えますから、と言われた。ところが、次の年に宿に行くと、彼女の姿は何処にもない、ここではないどこかに雲隠れしたようだった。