ココロオドル光景を見た
しかしそれは夢の中の景色で、
現実は仮天井5回中4回すり抜けだった。
神引きは草薙以外出来てないし、
世界は残酷だ。 (原神)
『星座』
今日も一人、家でご飯を食べた。
炊いたご飯に、スーパーで買ってきたセールの惣菜。まだ11歳だった近藤瑠奈(るな)は、一人の時に料理をしてはいけないという家のルールがあった。
瑠奈はそれを守り、料理は基本しなかった。
──だが、このような日々をいつまでも続けて行けるとは限らない。
一週間前、不慮の事故で瑠奈の両親と他界してしまった。瑠奈は悲しみを必死に堪えていたが、その気持ちは長く持たなかった。
いつの間にか瑠奈の心は崩壊し、学校にも行かなくなった。しかし、食べない訳にはいかない。瑠奈は毎日、スーパーに行くのみの生活をしていた。
携帯は枕元に置いてあったが、そんなに触れていない。両親が誕生日プレゼントに買ってくれたコアラのぬいぐるみを、撫でたり抱いたりしながら毎日を過ごしていた。
心配してくれた先生が電話をかけてきてくれたが、最低限のことだけを話すと瑠奈はすぐに電話を切った。
(学校、今どうなってるのかな……)
パジャマ姿のまま、窓から半分身を乗り出してみた。本当はしたくない。怖かった。しかし、それを上回る胸のワクワクが抑えられなかった。
自転車に乗っている二人組の中学生を見つけた。二人はセーラー服を着て、楽しそうに会話している。その後ろに、瑠奈と同じ小学校に通っている二年生の男の子、齋藤祐希(ゆうき)が小枝を振り回しながら下校している。
その時、可愛いワンピースを着て綺麗なポニーテールを揺らす、瑠奈のクラスメイトを見つけた。人気者の木本百花(ももか)だ。百花の横には、瑠奈の友達の愛琉(あいる)がいた。
百花と愛琉、祐希、中学生二人は楽しそうに下校しているのに対して、私は臆病者だ、と瑠奈は思ってしまった。
愛琉は少し前まで手紙を毎日のように届けてくれていたが、いつの間にか途切れてしまった。
(…愛琉ちゃん……)
愛琉は瑠奈のことを忘れたかのように百花と会話していた。瑠奈は窓のふちに体を乗せ、それを見つめた。
その時、百花が大きな声を出した。
「ね、愛琉。瑠奈って子、覚えてる?」
自分の名前を呼ばれ、瑠奈は驚いた。
「瑠奈ちゃんのこと?」
「あの子、なんで不登校になったか知ってる?」
百花が愛琉に尋ねた。愛琉は少し黙り込むと、察したかのように頷いた。
「…瑠奈ちゃん、両親を事故で殺したんだって」
その言葉に、瑠奈は思わず息を呑んだ。事故が起きた時、瑠奈は愛琉と教室に残って会話をしていた。瑠奈がそのことを知ったのは、警察から電話が来たからだ。その時はもう家に帰っていた。
「わざとってこと?」
「そうだよ、多分。瑠奈ちゃん、きっと昔からその作戦を練ってたんだよ。で、その時実行したの」
その話は、筋が立っていなかった。
「でも、瑠奈ちゃんの両親が事故にあったとき、私、瑠奈ちゃんと教室に残って話してたんだ」
愛琉は百花に詳しく話し始めたようだった。そこで瑠奈は、窓を閉めた。
二日後。
空に浮かぶ星を、瑠奈は黙って見ていた。横にはコアラのぬいぐるみが置かれている。
たくさんの星座は、自分の運命を示唆しているようだった。瑠奈は星を数分見たあと、眠りにつくことにした。
それからも、彼女は同じ生活を続けていくのだろう。
──瑠奈を救うために、あなたは何をしますか?