隠された手紙
高校生の頃、高校生向きの雑誌が縁で、遠方の高校生と文通をしていた…
男子校に通っていた私には、女子とは、唯一の交流で、毎回の便りが何よりの楽しみだった…しかも、九州と関東で、行事や、日常の些細な事でも、新鮮で…3年間続いて、受験を期に終わったけれど、交わした手紙は、大切な宝物…
バイバイ
もうそろそろ、お別れの時間…毎回、この時間に、なかなか慣れない…
出来るなら、朝から夜まで、ずっと一緒にいたい…同じベッドで同じ夢を見たいのに…朝は、おはようって、誰よりも早く挨拶交わしたい…
だから、
バイバイ
って、言いたく無い…嫌なワードだと思う…
旅の途中
人生は、重き荷を背負うて、坂道を登るが如し。焦らず、されど休まず。
確か、徳川家康の遺訓で、こんな一節があったと思う…
他にも、人生は、旅に例える事が多い。慥かに、似たような生き方は、多いけれど、全く同じ人生なんて、ないと思う…同じものを見ていても、十人十色、感じ方は、なかなか一致しないと思う…
僕の前には道は無い
そんな言葉が、馬齢を重ねる事に、身に滲みてくる…
まだ知らない君
中学生になって、初めて、恋愛小説を読んだ…
それまで、歴史や純文学位しか知らない私には、凄く衝撃だった…勿論、異性を意識した事はあったけれど、心があれ程、揺れ動いた事はなくて…
未だ、そんな感情すら知らなかったのに、急に、そんな誰かが、自分にも、現れると、何の根拠もない儘、何時か、何処かに、居るような気がした…
思春期になりがちな、甘い夢物語だった…かもしれないのに、今でも、何となくそう、思い乍ら…未だ見ぬ君を想ってみる…
日陰
ひっそりと生きられたらいい…子供の頃から、そう思っていた…吃音で、不器用で、運動音痴で、勉強も駄目…長所なんて、自分では思い付かない位、つまらない人間だと知っている…
そんな私だから、なるべく目立たない様に、心掛けてきた…向日葵の様な明るさに、憧憬乍ら、苔みたいに…忘れられた、否、誰にも気付かれずに、ひっそりと、過ごしたい…