小さな勇気
あの時、もう少しだけ…勇気があったなら…何度も、あの日のあなたが、浮かんでくる…
どんなに、悔やんでも、あの日には、戻れ無いことも解ってはいるけれど…
あの日、あなたから、遠くへ行く事を聞いて、何も言えなくて…心の中では、
行かないで
って叫んでいたのに、言葉に出来なくて…あなたの背中を滲む瞳で、見送るしか出来なくて…
もう、遠い記憶なのに、今でも、夢に見てしまう…
あの時、もう少しだけ…
わぁ!
叫びたい…何故…
でも、喉元迄上がって来ているのに、声にならない…何時もと変わらない、この景色なのに、一つだけ除いて…
昨日迄、何時も一緒にいたあなたが…ぽっかり空いた私の隣…何時もの癖で、手を伸ばして見ても、掌は、宙を掴むばかりで…
あなたの居ない、これからの時間…この気持ち、どうすれば…
終わらない物語
突然の雨で、昇降口で雨宿りする事に…天気予報では、夜遅くになっていた筈なのに…溜息をつきながら、少し暗い雨空を見上げていた…
不図、雨宿りした下人の話しを思い出した…行く宛のない下人が、荒れ果てた門の下で、思案した挙げ句…勿論、そんな物語とは無縁だけど、こんな一人ぼっちの雨止み待ちは、説明出来ない不安に包まれてしまう…
そんな、センチメンタルな心持ちで、降り止まない景色が、突然遮られた…振り向くと、そこにいたのは、不器用に微笑むあなたが…空色の傘を拡げている…
一緒に帰ろうよ…
そう言ってるみたいに…
優しい嘘
最初から…解ってたんだ…でも、だから…気付かない振りしていたんだ…誰にでも優しいあなたは、こんな私にも、同じ様に、優しくしてくれたんだよね…
何時も、皆の輪に入れなくて、強がりの振りをして、本当は、片隅にでもいいから、仲間になりたかった…
そんな私が、初めて、好きになった、あなたに、気持ちを伝えたら、受け入れてくれたね…
其れが、凄く嬉しくて…せめて、その、優しい嘘を、もう少し、信じさせて…
瞳をとじて
眼を閉じると、あなたの顔が浮かんでくる…何時も、口数少なく、けれど、優しく竚んでいたね…その優しさに、ずっと甘えていた私…
特別な出来事とか、ざわめく事なんてなかったけれど、あなたが側にいてくれるだけで、心が穏やかでいられる…
瞳の奥に浮かぶあなたも、素敵だけど、今すぐ逢いたい…