柔らかい雨
秋の夕暮れに降る霧雨…柔らかく、身体に纏わりつく細かい雫…
柔らかくて、すっと、服の中に溶け込んで行く…其れなのに…
段々と身体が、寒気に包まれてゆく…見た目の柔らかさの中に、まるで、花の陰にある、薔薇の棘の様に…秋の夕暮れは、美しいけれど、忍び寄る、冷たい空気が、潜んでいる…
一筋の光り
空いっぱいに拡がる、雨雲の海…今にも、溢れそうな雨の雫を溜めている…
まるで、私の心を、見透かしているみたい…
さっき見かけた、あの人の横には、私の知らない誰かが居て、あの人が、私の知らない表情をしていた…
あの人にとって、私は、ただの知り合いなだけで、私には、何も言えない…けれど…
色々な不安で、押し潰ぶされそうで、せめて、一筋の光りでも、見えたなら…
哀愁を誘う
日毎に早くなる秋の夕暮れ…陽射しが翳ると共に、寒さが追い掛けて来る…
夕風に、背中を丸め乍ら、1人歩く帰り道…何時ものことなのに、何かが、欠けている様な、寂しいとか、人恋しいとか、そんな言葉では、いい表せない、心のすきま風…
そんな時に、そっと浮かんでくる、あの人の面影…
鏡の中の自分
洗面台で、歯磨きし乍ら、鏡に写る自分の顔を見る…ぐちゃぐちゃな髪の毛、皺だらけで目立つ豊齢線、だらしないお腹…
歳と共に、変わっていく自分の姿…鏡でしか見られない、自分の姿に、現実を突き付けられる…自分の中では、もう少し引き締まって、クールにきめている心算なのに…
鏡に写る自分…でも、本当の姿なのか…
眠りにつく前に
何時ものことだけれど、病院から処方された、睡眠剤を飲む…ここ数年、続く寝る前の習慣…
数年前の、勤務先でのストレスチェック、病院への受診を勧められて、翌年も同じ結果で、近くの病院を探して、受診した…抑鬱症と云う名をつけられて、漢方薬と就寝前の薬を出された…
それ以来、寝る時には、その薬無しには、寝られ無くて…薬を飲んで、眠くなるまでの時間、堪らなくなる位、孤独な気持ちで満ちてしまう…この、一日の終わりの儀式が、憂鬱で、避けて通れないなんて…