閉ざされた日記
本棚の隅に置いた儘の大学ノート…日に焼けて、埃も積もっている…ノートの表紙には、あなたと私の似顔絵が寄り添っている…
あなたはこの交換日記、憶えてるのかな…二人がまだ十代の頃、周りに秘密にしていた関係の秘かな証だったね…他愛もない日常の出来事や、二人だけの心の交換…まだ携帯電話すら無くて、アナログなものだけれど、確かに、二人だけの世界だったね…それも、あの日から、どうして..も開けない…
木枯らし
枯れ木を揺らす風…冷たく乾いて、肌を刺す…ポケットに突っ込んだ手が、なかなか暖かくならない…寒々しい景色と、時折吹く突風に心が折れそうになる…道沿いのコンビニや建物の陰で休み乍ら、車で移動していたら、だの、こんな日に出掛けなきゃ、なんて思いつつ、一歩一歩、歩むしかない…早く家に辿り着いて、炬燵に潜りたい…そう思い、冷たい木枯らしに抗い乍ら、歩いて…
美しい
夕方、西に向かって車の運転している…沈みかけた夕陽に、ふわりと浮かんだ雲が、優しく彩付いて、渋滞のイライラが、あっと言う間に消えて…バックミラー越しに見える空は、青から少しづつ蒼く夜の帳に変わっていた…道の先には、建物や街路樹が、影絵のように、並んでいる…刻々と移ろう夕陽、車のライト、長く伸びる様々な影…昼間とは違う風景に、疲れた躰に、何かが染みてくる…
この世界は
今あるこの世界って何だろう…130億年だか遥か遠い昔に、何らかの大爆発が起きて…其れから遥かな時間の後に、地球が出来て、其れからまた遥かな時の後、人間が現れて…そして今、こうしてある日常…色々な見えない繋がりの中で、私がいて…何の為に、存在して、この世界の中で、生きているのか…世界は限りなく大きくて、ちっぽけな存在の私…この世界って何だろう…
どうして
信じられない…あなたから、言われた言葉が、頭の中で、ぐるぐるしている…えっ、こんな事が本当に…目の前にいるあなたの姿が、段々滲んでいく…こんなにも、現実って、唐突に…ぐちゃぐちゃな頭と心が、色んな想いで、絡んで縺れて、真っ直ぐに立てない…足元も何か頼り無くて…心配そうに見つめるあなた…頭の中にこだまする、あなたからの、君が好き…のフレーズがどんどん心を満たして…