秋晴れ
澄んだ青空…所々千切れ雲がゆっくり移動している…山上の展望台からのパノラマは、少し色付き始めてきた木々が何気にグラデーションになって…時々吹風が少し冷たくて、心地よい…
どのくらい経ったのか、幾ばくか影が伸びていて、西陽が少し赤みが挿してきた…そして、何処からか、微かに甘く香ってきた…近くに金木犀でもあるのだろうか…同時に、長い黒髪を靡かせ、いたあの人の横顔も浮かんできた…
忘れたくても忘れられない
どうしたら…もう遠い昔の話なのに、今でもあの日から…
初めて出逢ったのは、ちょうど今頃の季節で、夕焼けが綺麗な帰り道…何時も立ち寄る本屋で、某作家の新刊を探していた時、先に手にした君を見掛けた…余り知名度のない作家だったので、一寸吃驚したのと、何となく親近感を感じた…其れから何度と無くその本屋で見掛けるようになり、本よりも、君の姿を無意識に探すようになった…言葉を交わすわけでも無く、ただ君の姿が見えただけで、何となく満足できた…けれど、仕事が忙しくなり、暫く行けなくなり、久しぶりにまた行き出して以降、もう君の姿を見ることが無くなり、その内僕も転職して、とうとうあの本屋にも行かなくなり、そして君とも再会することも無く…それなのに、時々、不図した時に、君の姿を探してしまう…
やわらかな光
晩御飯を済ませて、暫くゆっくりした後、散歩に出掛けた…食卓から窓を見ると、月が出ていたから…
久しぶりに出た夜道は、月の光が満ちていて、木々の隙間から溢れる月光が綺麗な影絵のように見えた…頭の隅に中也の詩を手繰り寄せ乍ら、ゆっくりゆっくり一人歩いて…
鋭い眼差し
背中から強い視線を感じる…身体を貫く様な鋭さと、逃げられない強さ…振り返る勇気さえないけど、あいつだと解ってる…ロックオンされて、何時でも何処迄も続く追跡。少しでも隙を見せたら、屹度そうなることも判ってる…今はただ、じっとやり過ごすだけ…
高く高く
何処迄も続く青空を飛べたなら…千切れ雲の間を縫いながら飛ぶ姿を思い描いてみる…真っ白な翼をはためかせられたなら…
どう仕様もない行き詰りを感じる今、せめて自由に空を翔べたら、どんなに救われるだろう…何からも解き放たれて、あの山を超えて、太陽に近付いて、そして…