鳥かごに、こころだけ置いて外からのぞいている
一切の害悪や視線といった侵入を拒んで
けいれんしたり萎れたりするのを、のぞいている
ローゼラ、ビゴデといった種を定期的に与えて
腐らないように慎重に経過観察しています
そのおかげか、こころはだんだんと凪になって
もうさびれた欝みたいな形をしていたのですが
いまはもう、詩のようなこころもちで
やわらかな、かるいきもちで
しかし電車にゆられてなんでもなく
ポロポロと涙をこぼしていたあの頃の方が
わたしは人間だったのではないかと
不安になってもいい

すごくすき
うまれてはじめてもらった
いちばんみじかいみじかな詩

『レインカバー』
めのまえに広がるビニールの世界に、ポツんポツんと、
しずくが落ちてはたどって、流れるさまをみてるのよ
冷たい水も、じめじめのアスファルトからもはなれられて
このビニールがあれば、はじいてはじいて、むてきよ
にじんだみんなは、こちらの世界には、いられないのね
ようちえんの、おにいさん、おねえさん、
おむかえの、おかあさんたち
おにいちゃん、ママ！
あるいて、かさをささなきゃいけなくて、たいへんね
わたしだけが、このベビーカーのお城にすめるのね
ポツんポツんっておちてきたってね
はじいてはじいて、むてきなのよ

優越も劣等も、一見交わりようのない感情にみえてその実、構成物質は7割程度同じ楼閣から抽出されたものであり、人間に対する共通の効能として、その芯にじわじわと汚染の毒を注いでいくということを特筆すべきである。

置いてけぼりにしてきたもののことを考えてる
一緒に連れていってあげたらよかった
左の手がどんなに震えても怖くても、
ペンを持ちつづけ、紙の匂いを忘れてはいけなかった
いちばん捨ててはいけない、
真っ直ぐ立つための芯だったのに
もっとみんなに見せびらかしたらよかったのに、
線香花火をみるときの
桜の砂時計を思い浮かべるときの
こころは確かに芯から描いていたのに
一切の侵入を拒んで、腐らせてしまった
いま、何かに寄りかからないと文字も読めない
後悔ばかり、後悔ばかり
取りに帰りたい、すくってあげたい、振り返っていま

いや、振り返ってる
少しずつ、少しずつ芯に栄養を与えるための
人生の落とし物を拾って歩いてる
あす、膨れ上がった巨星におしつぶされるとしても
芯を再び甦らせるために歩き出す