すべてに意味がないと世を全否定しても
それは意味の観念に囚われたまま
すべてに意味があるという主張と変わらず
意味の観念に囚われている
意味がないことにも意味があるとしても
意味が二重化されて檻も二重になるだけである
意味の意味を 意味を求める意味を
意味の世界は求める度にどこまでも広がり続ける
それに一旦蓋をすること それが生活の常である
あなたとわたしでデカルトごっこ
ふたりで一緒に方法的懐疑の会議
我思う、前に我らあり
ふざけた会議はすぐに終わる
疑うことはほどほどに
明かりを消して今日も眠る
お別れの日 天気は予報通り晴れていた
十年来の友達が転職で遠くの町へ引っ越す
今日は引っ越し前の二人で会う最後の日
予約したお店で華やかな料理を前に彼女とおしゃべり
昔からの憧れの仕事でやっと夢を叶えられたと笑顔で言う
それが夢だったことなんて私は当たり前に知っている
だから私も笑顔で送り出したい なのに上手く笑えない
今日をお祝いの日にしようと決めたのは私だったのに
喜びだけではない感情が混ざり合って渦巻いている
食事を終えて外へ出ると予報外れの天気雨が降り出した
二人とも傘を持っていなかったので駅へと駆け足で行った
結局、別れの言葉を上手く言えないまま友達を見送った
今日見たあの笑顔を引きずって一人だけの帰り道を歩く
晴れなのにまだ降り注ぐ天気雨は私を表している
私は肩をすくめて抱えていたものを頬へ伝わせた
今ならその雨の柔らかさに許された気がして
一筋の光を無視して歩く
希望や救いには距離を置く
近づくとすぐ絶望だとか言い出すから
オーバーな言葉の嘘っぽさが苦手
夜の自販機ぐらいのだらしない光がちょうどいい
夕方 公園 飛んでいったボールを拾いに行く子
一瞬で離れたものを時間をかけて追う
輪のために輪から外れていく
追いかける小さな背中には哀愁が漂っている
そのとき地面を蹴る脚の疲れはその子だけしか知らない