行かないで そうわざとらしく言って彼を止める
別れ際にいつもしているお決まりのくだり
重いふりをして彼を笑わせる
ふりのふりだって彼に気づかせないために私もすぐに笑う
自分で自分に腹話術 本当の気持ちを誰かに言わせる
飽きられないように声色と動きを毎回変えて言ってきた
だけど彼の笑った後の表情が不穏に感じる
頑張ってきたけどついに飽きられたのかもしれない
それでもどうしたらいいかわらなくて私はまた誰かになる
行かないで そうわざとらしく言われて止められる
別れ際にいつもやられるお決まりのくだり
重いふりをして僕を笑わせる
本当にしているのは重くない恋人のふりだとわかってる
彼女のすぐに笑った後の表情が不穏に感じてしまうから
その表情に触れられない自分の情けなさを隠すために笑う
だけど自分の笑った後の表情は隠しきれてないんだと思う
頑張ってみたけれどついにそれもバレてるのかもしれない
それでもどうしたらいいかわからなくて僕はまた笑う
青空はどこまでも続いていなかった
視界は窓 窓のように視界にも枠がある
窓から空のすべてを見ることはできない
青天井にも天井がある
だから枠の外はどうなっているかわからない
じゃあ空がどこまでも続いているって信じていないの?
2度目の帰り道 隣にいる君にそう聞かれた
前よりも肩の距離は狭まっている
この見えない青の続きを信じたい
学生時代の衣替えの移行期間を思い出した
夏服と冬服のどちらで登校するか本人が決められる
たしか数週間だけそんな期間があった
浮かないようにするためか期間の初めでなく中盤から衣替えするクラスメイトが多かった気がする
そんなことを気にせずに初日から着てきた人がそれについて軽く笑われていた気もする
規律の中の選択自由が制服によって可視化される感じ
各々の意思が服装によって二分化する不思議な空間だった
徐々に皆が皆の服装を様子見ながら選んでるあの感じ
とても地味だけど教室に流れていた何か
それが妙に自分の印象に残っている
叫びには声が枯れるまでという身体による限度がある
しかし叫びは形を変えて声から逸脱していった
.mp3から.txtへエンコードするような叫びの変換
現代の心の叫びは声でなく文字で遂行可能なものとなった
喉代行の指先は人の欲動のままに打ち出す
枯れることを知らない限度なき叫びを
始まりはいつも持続する時間を切断するものである
始まりはそれ自体により区切りのない時間を終わらせる
今日や明日がなかった時代はどんな暮らしだったのだろう
日陰が時間を表せることすらも気づかなかった時代
そもそも時間は人が生得的に感じられるものだろうか?
終わりのない問いが始まる