放課後はすべてがどうでもよくなる
大嫌いなあれこれから解放されて自由を感じるからだ
学校を後にしてすぐ側にある秘密の場所へ足を運んだ
そこにはこっそり集めた大切なガラクタたちで溢れている
ぼろくてどこかが欠けたりしているお気に入り達
辛い日には家に帰らずしばらくそれを眺めて過ごした
家でも学校でもない誰も知らない自由な居場所
自分だけの秘密基地 感情たちの解放区
それが自分の拠り所だった
もしこの場所が無くなったら自分はどうなるんだろう…
その無意識によって魔が差した
気がついたら基地へ火を放っていた
積み上がっている何もかもが不揃いな本が燃え上がる
誕生日に貰ったぬいぐるみも炎に包まれていく
家族からのもの 友達からのもの あの人からのもの
記憶の染み付いた物たちがすべてが灰に変わっていく
なんとなく気に入って今日拾ってきたライター
そんなつまらないものがすべてを終わらせた
放火後はすべてがどうでもよくなる
大好きなあれこれから解放されて自由を感じるからだ
解放区からの解放
自由になれたはずの心は辺りを舞う灰と同じ色をしていた
カーテンを開いて外を見てみると車が十台走っていた
車が十台
人が悲しみに包まれたとき論理は息を潜める
頬を伝うものは因果の網目を避けるように滴り落ちる
涙は根拠から流れるの?
息を吹き返した論理が尋ねる
そうだね そうかもしれない
情緒は穏やかにそう答えた
子を前に親は泣き続けてはいられない
心踊る なんて人が何でもしれっと人にすることの表れだ
擬人法によって身体がないものにダンスまでさせている
一方的に身体を与えてそれを人として扱うなんて
そんなのは酷い 私の心が泣いているよ
自我は知覚の束である
経験から得られたものの束が自我を織りなす
哲学者のヒュームはそう考えた
知覚から離れるひととき
それは眠ることだろう
夢も見ずにただ眠ることだ
眠りは自我という一つの束からの解放を指す
束から離れたそこでは何が起きているかはわからない
何が起きているかを経験する束がないからだ
そして目が覚めることでそこから束に戻る
そこを間として再び束が織りなされる
束と束の間 そこでは時間さえも経験できない
束の間の休息