上着を脱いで
春を感じる
あたたかい
うすもも色の
空気の中
どこから
来たのか
白いボールが
弧を描き
私の腕の中に

はじめましての
ボール
とまどいながら
はずむ

あぜ道で
急に鳥が羽ばたいた
たぶん　アオサギだ
大きなグレーの羽と
黒い脚が絡まるように見えたが
すぐ脚をおさめて
飛び立っていった

渡り鳥かな
またね！
と　思ったが
アオサギは
日本にとどまる鳥だった
田んぼに水が張ったら
すっとした立ち姿に
また会えるかな

春は春風とともに
やってくる
緑道の木々に
若い芽をつける

アラカシ　シラカシ
ソメイヨシノ　クチナシ
木のひとつひとつにつけられた
樹名板
学名　分類　特徴

いつ
美しい花が咲くのか
まるまるとした果実が実るのか
もう既に決まっている
そんな樹名板が
私にも欲しい

赤ちゃんは昼間
兄弟の笑い声や
テレビの音に負けぬよう
精いっぱい泣く

赤ん坊にも
存在意義があるところを
示さなければならない
と　ばかりに

夜　赤ちゃんは
暗い清らかな家の中
しみじみ泣いている
上を向いて

天に向けて
自分の不自由さを
嘆きながら
涙をこぼす

小さな幸せを感じるのは
冬の間は
温かい湯船
温かいお布団

ネコはいつも知っている
安全で温かく
出入自由な場所

くーくーいいながら
布団の中に潜りこむ
私の右腕を枕に
足を投げだして
冬の間中

3日前から
気温の変化
ネコはちょっと暑いようだ
布団の上で
シャラリと顔を洗う

私の小さな幸せが
ひとつ減った
春になって