今　夜空を飛べるのは
飛行機かヘリコプターだけど
近い未来
空飛ぶクルマが飛ぶそうだ

夜空を駆ける
マイカーやタクシー達
浮かぶ信号機

空から音が降る
キラキラした
眠らない白夜

その中で
旧式の体を備えた私達は
穴倉の中で眠るのか

父は私を
シランの花のよう
と　言っていた

板塀のそばに
可憐に
案外たくましく咲いている花

父は男兄弟7人で育ち
かなりのロマンチスト
だったようだ

人に言うと
言葉に詰まると思うので
黙っているが
ひそかな想い出である

あなたは誰
いてはいけない所にいる
ベランダの隅
12階建のマンション

とっさに叫ぶが
叫ぶ声は声にならない
あなたは立ち上がり
サルのように逃げていく
あまりの身のこなしに
本当のサルかもと思う
思ったら
声が戻ってきた

このごろ私は
一筆箋に手紙を書く
私もみんなも
長い手紙を書く気力を
もう失くしているのか
小型の便箋が増えた

プレゼントの上に
短いメッセージ
さらっとしたお礼の言葉

たとえ
隠れた想いを
込めたとしても
一筆箋の手紙は
かんたんに行方不明になる

百貨店に
食器売り場があると
足が向いてしまう
ライティング輝き
売り場ごと煌めいている
そもそも　食器は
食べ物を美味しそうに
盛り付けるためのもの
清潔感があり
ちょっと素敵で
丈夫であれば　なお良いが

食器売り場はあやうい
輝く薄いワイングラス
繊細な細い脚
ヘレンドのティーカップ
リュック好きの私には
後ろにも目がふたつ必要だ