子供の頃は自信がなかったので
よく もう一つの物語を考えた
兄弟が多くて服はお下がり
家も昔ながらの瓦屋根で
台風になれば雨もり
そこでお金持ちのひとりっ子ならと
考えるのである
近所に住む年上の女の子の話を
同級生はよく知っていた
あの おねえさんはひとりっ子
お部屋は2階のふた部屋
ベッドルームと勉強部屋
同級生はいいなと言った
あのお家なら
台風がきても大丈夫そうだ
すてきなレースのカーテン
2階に出っ張ったひとりっ子の部屋
この家のあととり娘
だんだん私には
閉じ込められたお姫様のように
見えてきた
ずっとここにいなければならないなんて
窮屈だなと思った
家以外の場所で眠る時は
怖い怪談話は
御法度である
ホテルの部屋などは
恐ろしい由来しか
想像できない
テレビの特番は消して
真に迫った投稿は
明日の朝に回し
暗がりの中に
動く影を感じると
照明を全てつける
一度 考えつくと
妄想はふくらむらしい
フレーバーティーが気に入って
イベントに行ったり
福袋でたっぷり買ったり
この5年間飲み続けた
すると この3ヶ月
飲むと調子が悪い
毎日飲むことは叶わず
たまに飲むことにした
昔の人はよく言ったものだ
過ぎたるは及ばざるが如し
全くそれを地でいっていた
買い続けて たっぷり余った
この紅茶のティーパックを
どうしよう
幸い賞味期限は長いので
まわりの人たちに
少しずつ配ろう
過ぎたるは〜なので
ほんの少しずつ
もしかしたら
ずっといっしょに
いるかもしれないと
思ってはいたけれど
まさか36年もいっしょに
いるとは思わなかった
こんなことなら
もっと たくさんの
打ちつける夕立のような
ゆっくり降るぼたん雪のような
愛言葉を
言ってもらえばよかったかもしれないね
今度 同窓会がある
小学校の同級生は24人なので
小さな会だ
そのうちの何人かは
今でも友達で
会って喋るとうれしい
小学生の頃の
終わりの会で
誰々が川で泳いでいました
よくないと思います
と、言っていたあの子も
やってくるのかな