お偉いさんの視界から外れた瞬間、スマイルという仮面を脱ぎ捨てて般若の面を着ける。着脱式のスマイルは不自然であり、素人目にも贋作だと分かる。
スマイルは勝手に溢れてくるものなのに給油ポンプみたいに搾取される。スマイルは消費税の対象外だ。
題『スマイル』
それは既に書いてしまった。だから此処にあるのは見られてはいけないもの。このアプリの存在に気づいて上から順に読んでくれていたなら聞いてほしい。書かれた内容は当時の本心かもしれないけど、文字にするのと実際に言葉にするのは違う。だから必要以上に傷ついたり悲しんだり、怒ったりしないでほしい。
そもそも誰にも見られていない前提で書いている。
題『どこにも書けないこと』
時間は存在しない。君が時刻を知らせる前に地獄が始まり、暖かな食事は冷めきった夕餉に変わる。夕刻には秒針が峠6から峠12までを登りきれずブランコのように落ちてきた。休んでていいよ。時計の針は肩凝りが酷くてカチコチだ。一日くらい時計にも休みがあっていいと思う。
題『時計の針』
グラスに注いでしまえば、田舎の蛇口から出る水道水はアルプス渓谷の雪解け水と大差ない。仮に初恋の人と運命的な再開を果たしたとして"今でも好きだ"と伝えるなら喜ぶだろうか、気持ち悪がるだろうか?
豚骨ラーメンのようにギトギトな溢れる気持ちは純粋な恋心であってもいつでもWelcome とはならない。
題『溢れる気持ち』
美しい花を咲かせる場所を求めて、コンクリートの足場を踵でカツカツ踏み鳴らし、記憶の向こう側へ旅をする。だが、どれだけ進もうと満足感を得られた瞬間は見当たらない。もはやシャッター街となった記憶の商店街で売っているのは常備薬と疲労物質だけだった。母と兄が寄り添いにくる。近づく顔からそっぽを向く。頭髪は馬油の艶のある母親似の髪が白髪混じりに伸びており、ツヤはあるが少しキシキシしていた。側頭部に唇のあたる感触がある。特に不快感はなく、何とも思わない。萎み切った筋肉は熱生産を終了しており、その僅かな温もりでさえ貴重だった。
題『kiss』