美しい花を咲かせる場所を求めて、コンクリートの足場を踵でカツカツ踏み鳴らし、記憶の向こう側へ旅をする。だが、どれだけ進もうと満足感を得られた瞬間は見当たらない。もはやシャッター街となった記憶の商店街で売っているのは常備薬と疲労物質だけだった。母と兄が寄り添いにくる。近づく顔からそっぽを向く。頭髪は馬油の艶のある母親似の髪が白髪混じりに伸びており、ツヤはあるが少しキシキシしていた。側頭部に唇のあたる感触がある。特に不快感はなく、何とも思わない。萎み切った筋肉は熱生産を終了しており、その僅かな温もりでさえ貴重だった。
題『kiss』
2/4/2026, 7:56:08 PM