6/12/2025, 7:37:53 PM
暖かみを帯びた風は唄い手のように伸びやかで心地よかった。久々に見た彼女はすこし大人びていた。以前は見向きもされなかったが、手を振ると彼女の黒瞳が包囲磁石のようにピタリとこちらを向いた。身体を揺らせば、それに合わせてクルクル、クルクル、狂い舞。猫撫で声でトロンとした目つきとなる。私はエネコログサ。別名ねこじゃらし。
題『I love』
6/12/2025, 4:41:39 AM
白光りする円盤が地表近くをユラユラしていた。鴉が存在感を放つ夜明け前、小雨が視界をちょっと叩きはじめた。日課のジョギング中のことだ。目の前に現れたのは発光する首輪をつけた大型犬である。体毛は濡れてスラリとしており、道草を喰んでいる姿は神々しい。天の国に迷い込んだのだろうか。軽く会釈をしつつ、徳を積んだ気分になった。早起きも悪くない。
お題『雨音に包まれて』